歪んだ月が愛しくて2
『じゃあ僕はお役御免ってことでいいよね?』
「まさか。オメーは引き続きシロちゃんの居場所を探れや。こっちはこっちでゆるーくちょっかい掛けるからよ」
『はぁ…』
「あーら、溜息吐くと幸せが逃げちゃうわよん」
『アンタに協力してる時点でとっくに幸せが遠退いてるよ』
「かわいそーなシキちゃん。僕ちんが慰めてあげるねん」
『いらん』
「もう連れないんだから。そんなシキちゃんにはとーっておきのものをプレゼントしてあげる」
『結構だ』
「双児の区境に雑魚がいーっぱいおねんねしてるの。殆ど運ばれちゃったけど素性が割れないように後処理よろぴくね」
『チッ、また余計なことを…』
「やったのは俺じゃねぇって」
『アンタが指示してやらせたんだから一緒だろう』
「ククッ、まあ見てろよ。その内面白ぇもん拝ませてやるからよ」
しかし、己の上役の制裁に怯えようとも、それでも奮い立たせるものがあった。
飢えていた。
ギリギリの快感を欲していた。
弱っちいクソみたいな雑魚ばかりで、誰も満足させてくれなかった。
アイツと出会って“鬼”を作ってからは多少マシになったが、それも長くは続かなかった。
退屈だった。
未だ渇きは癒えない。
そんな中、キョウは出会ってしまった。
『―――起こしたのは、お前か』
あの衝撃は、今でも忘れない。
その瞬間、退屈の日々が一変した。
一度知ったら抜け出せないヤクみたいな快楽。
飢えて渇いた獣を一瞬で呼び起こした、爛々とした鈍い光を宿す深紅の瞳と月の光を一身に浴びた銀髪が脳裏にこびり付いて離れない。
いくら殴られようとも、内臓を引き摺り出されるような痛みを与えられようとも、死ぬほど退屈な空間に押し込められても、あれだけの衝撃を受けたって簡単に忘れることは出来なかった。
―――白夜叉。
俺の渇きを唯一癒してくれる、白き鬼。
ああ、考えただけでもゾクゾクする。
「ヒャッハハハ、愉しみだねぇ」
夏が待ち遠しい。
あの季節に、もう一度。
遠くの方で、獣の遠吠えが聞こえる。