歪んだ月が愛しくて2
「じゃあ何組に入ったんですか?」
「Sだ」
五つあるクラスの編成は家柄・財力・学力等で決まる。
その中でもS組はピラミッドの頂点だ。つまりS組に入ると言うことはここではちょっとしたステイタスになるらしい。
「S?てことはどっかの御曹司かよ」
「萎えた〜」
「きっと碌なのじゃねぇよ」
「ブスか、デブか」
「性格クソか、ビッチか」
「Sに入るくらいだから絶対腹黒に決まってるよ」
「そいつはどうかな…」
紀田先生の言葉に真っ先に食い付いたのは頼稀だった。
「どう言うことだ?」
「どうもこうもねぇよ。何たって転入生は………あ」
「あ?」
「……もしかして、お前も知らなかった?」
「………」
「へー、お前でも掴めない情報ってあるんだな」
「チッ」
「よ、頼稀くん落ち着いてっ!」
「汐の言う通りだよ。挑発に乗るなんて頼稀くんらしくない。それでは相手の思う壺だよ」
「……煩ぇ。お前達に言われなくても分かってんだよ」
頼稀は汐と遊馬に対して紀田先生への苛立ちを露わにする。
「ふーん…。まあ、知らないなら教えてやってもいいけど。どっちにしろお前等にも無関係な話じゃねぇからな」
「俺達に関係があるだと?」
「正確に言えば立夏にな」
「俺?」
「ああ。だって転入生はお前の…―――」
「……え、」
次の瞬間、酷く絶望した。
それはあまりにも信じ難い事実で自分の耳を疑った。
でも紀田先生は否定してくれなかった。どんなに信じ難いことでもきっとそれが真実なんだろう。
周囲の歓声が聞こえる。
でもまるで耳に入って来なかった。
呆然と俯く俺の傍らで怒りと不安の混じった頼稀の顔が脳裏にこびり付いて離れない。