歪んだ月が愛しくて2



未空Side





「S組みっけ!」

「凄い野次馬の数…」

「何だか尻込みしちゃうね」

「こりゃ姿を拝むだけでも骨がいるな」

「……行くぞ」



体育祭の種目決めを終えた後、俺達は転入生を一目見るために1年S組にやって来た。
すると俺達の姿を見た野次馬共が少しずつ左右に捌けていく。
それを良いことに教室の外から顔を覗き込むと一番後ろの席で机に頬杖を付いている茶髪の男子生徒が目に入った。



「格好良い…」



教室の中でそこだけが違った。
オーラも色も空気も何もかも違っていてすぐにこの人だと分かった。



「あれが噂の転入生くん?」

「ヤバい!超イケメンなんだけど!」

「僕ファンになりそう!」

「親衛隊作っちゃおうかな!」

「僕も!」



立夏に引き続き2人目の転入生は予想通り学園中の注目を集めた。
誰もが認めるイケメンフェイスに他人を惹き付ける独特な雰囲気が持つ彼だけど容姿だけで注目を集めているわけじゃない。
その理由を紀田ちゃんが教えてくれた。



「「格好良い!!」」

「……煩ぇよ」

「フン、ちょっと顔が良いとすぐこれだ」

「だってイケメンじゃん!」

「顔はね」

「神代会長だってそうじゃん」

「はぁ!?何言ってんの!尊様は顔だけじゃないから!容姿は勿論だけど声もオーラも内面ももう全てが完璧でパーフェクトじゃん!」

「そ、そうだね…」

「そうだよっ!」



みーこ愛されてんな…。



「立夏くんも来れば良かったのにね」

「うん、そうだね…」

「普通弟が転入して来たら真っ先に飛んで来そうなもんだけどな」



そう、転入生はリカの弟だった。



「でも立夏と転入生ってあんま似てないな」

「確かに…」

「二卵性とか?」



のんちゃんに言われて改めて転入生の顔を凝視する。
確かにリカと転入生の顔はあまり似ていない。あまりと言うか正直全然似てない。
でも顔が似てない兄弟ってよくいるじゃん。だから最初はそれ以上深く考えなかったけどのんちゃんの言葉に険しい顔をした頼稀を見て嫌な想像をしてしまった。



『ああ。だって転入生はお前の弟だからな』

『……え、』



あの時のリカの顔が忘れられない。



初めは吃驚してるだけかと思った。
でも次第にリカの表情は変わっていった。寂しそうで酷く怯えているような顔に。



「おい」



不意に頼稀に呼ばれて振り返ると。



「何深刻そうな顔してんだよ。言って置くがお前は余計なことすんなよ」

「でも…」

「これは立夏の問題だ。他人のお前が安易に首を突っ込むな」

「……分かってるよ。でもリカのあんな顔初めて見たからどうしたらいいか分からなくて」

「だからアイツを教室に残して来たんだろう」

「だって、リカは会いたくなさそうだったから…」

「お前の判断は間違ってない」

「本当?」

「ああ。今のアイツはまだ心の準備が出来てねぇからな」

「……会わせない方がいいってこと?」

「それは根本的に無理だな。立夏が会いたくなくてもあっちはそうじゃねぇだろうし」

「何で分かんの?」

「じゃなきゃ態々こんなところに来ねぇだろう?」

「確かに。てか頼稀は本当に転入生のこと知らなかったの?」

「………」



あ、図星なんだ。
顔に悔しいって書いてある。



「こう言う時って挨拶くらいした方がいいのかな?」



不意に葵は教室の中を指差してそんなことを言った。



「放って置け」

「そ、そうだよ!今日は見に来ただけなんだしもう帰ろうよ!」

「えー、つまんねぇの」

「そうだよ。立夏くんの弟さんなんだから僕達だって仲良くしたいじゃん」

「いやいや、それはそうなんだけどさっ」



てかアオ声がデカいよ!

あっちに聞かれたらどうすんだよ!



「てか仙堂のくせに何焦ってんの?」

「俺のくせにってどう言うこと!?」


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