歪んだ月が愛しくて2
俺は手に持っていた皿をテーブルの上に置いて、目の前の哀さんと身体ごと向き合って視線を合わせた。
「哀さん、オムライス作ってくれてありがとうございます。凄く美味しいです」
「そう言って頂けて光栄です」
「それと昨日言われたこと、守れなくてすいませんでした」
『絶対に無茶なことはしないで下さい』
怪我はない。あんな雑魚共が束になって掛かって来ようとも負ける気はしない。
でも哀さん達に心配掛けたってことは、きっと無茶してないってことにはならないのだろう。
だから…、
「無茶して、心配掛けて…、すいませんでした」
「………」
そう口に出したら何だか目頭が熱くなって、俺はそれを悟られないように太腿の辺りの衣服を掴んで下を向いた。
何度味わっても慣れない、この感覚。
それと同時に押し寄せるのは、根強い罪悪感。
あの日、あんなことを口走らなければ、俺はこんな気持ちを抱かずに済んだのかもしれない。
でも後悔してももう遅い。
俺は言ってしまった。
文月さんと哀さんの心を抉る、あの言葉を。
「……心配するな、と言う方が無理な話です」
それなのに…、
「言いましたよね、立夏様を大切に思っているのは主人だけではないと。私にとっても立夏様はとても大切な方で、ずっと弟のように思っておりました」
「お、とうと…?」
哀さんの手が、テーブルの下に隠した俺の手を取ってそっと包み込む。
「勝手な話です。雇い主の大切な方を弟だなんて」
この人はどこまでも優しい。優し過ぎる。
勝手な話なんかじゃない。
そう否定したくてブンブンと首を左右に振る。
すると哀さんは俺の意図を読み取ったかのように優しく微笑んでくれた。
「立夏様はとてもお優しい方です。ご自分のことよりもいつも他人を優先して自身が傷付こうがお構いなし。だからこそ主人がいつまで経っても立夏様離れが出来ないのでしょうけど、……でもそれが立夏様なんでしょうね」
それはまるで独り言のように聞こえた。
でもそんな哀さんの言葉に文月さんは「勝手なこといいやがって」と文句を垂れる。