歪んだ月が愛しくて2
「それは厄介だな」
「外から見分ける方法はないんですか?」
「ないな。腕章やバッチがあるわけじゃないし、風紀委員は風紀委員にしか分からない」
「でも委員会ってことはどこかの部屋を使ってるんですよね?」
「ああ。でも生徒会と違って決められた部屋が用意されているわけじゃない。俺の代は一度も面と向かって会うことはなかったし、連絡事項は全てメールでやり取りしてたからな」
「それでも風紀を乱した者には制裁を加えることもあったんですよね?その時に相手に顔が割れたりしないんですか?」
「良いところに目を付けたな。確かに素顔のまま制裁を下せば顔を知られる危険がある。だがその相手が自分に制裁を加えた風紀委員について何も喋らなかったらどうだ?」
「何も?」
「風紀委員に許されているのは何も武力行使だけじゃない。学園の風紀を乱した者に制裁を下し、その者の処分を理事長に進言することも出来る。と言うのは建前だな。実際は風紀委員の独断と偏見で処分を決めることが出来る。つまり場合によっては風紀委員長の権限でその者を退学にすることだって出来ると言うことだ」
「……それって風紀委員長になる人はそれなりに社会的地位のある人、若しくはその将来が約束されている人ってことですか?」
「否定はしない。俺も文月も当時は周囲から相当持て囃されたからな」
「でも風紀を乱した者全員を退学にしていたわけじゃないですよね?そんなことしてたら少子化まっしぐらですもんね」
「そうだな。だから大抵の風紀違反は見逃していた。大事になりそうな事案、若しくはその恐れがあるもの以外は見て見ぬふりをしていた。風紀委員なのにな…。だから必然的に風紀委員が制裁を下した者は退学処分になっていたと思う。俺の時も退学者は出したし、停学処分に留めた者には誓約書を書かせて素性がバレないようにしていた」
「誓約書?」
「俺の時はな。しかしそれすらも暴力で解決させていた代もある聞いたことがある」
「つまり、何かしらの方法を持ってその相手の口を塞いでたってことですか?」
「ああ」
「じゃあ人数は?」
「俺の代は5人。ただそれも当てにはならない。その代によって人数には誤差がある」
「そうですか…」
つまり、風紀は少数精鋭の武闘派集団ってことか。
今の風紀に“鬼”が何人いるか分からなかったけど、もしかしたらその全員が“鬼”である可能性も出て来た。いや、寧ろそのつもりで探った方が良さそうだな。
「他に知ってることはねぇのかよ?」
「言ったはずだ。俺が知ってる風紀はあくまで10年前の風紀だと」
「使えねぇな」
「何だと?」
「それでも泣く子も黙る風紀委員長様かよ」
「元を付けろ。今はただの一般人だ。そう言うお前こそ元生徒会長で今は理事長だろう。それなのに風紀について何も把握してないのは職務怠慢じゃないのか?」
「あ?お前に文句言われる筋合いはねぇよ」
「ならお前も文句言うな。キャンキャン煩いぞ」
「はぁ?誰がいつ…「ス、ストップ!タイム!」
バチバチと睨み合う、文月さんと飛鳥院さん。
おいおい、数少ない友達じゃなかったのかよ。
「喧嘩はなし!暴力反対!」
「手は出してねぇよ」
「出されたら困るから言ってんだよ!」
「出さねぇよ。お前じゃあるまいし」
「俺のことはいいんだよ!友達失くすぞ!」
「友達?」
「友達…」
「………」
「………」
「考えるな!」
仲が良いんだか悪いんだか、本当に友達だったのかさえ疑わしい。
そのくらい2人の相性が良いとはお世辞にも思えなかった。