歪んだ月が愛しくて2



「悪いが、俺が知ってるのはここまでだ」

「あ、いえ、参考になりました」



風紀について改めて分かったこと。
それは簡単には尻尾が掴めないと言うことだった。
所在も人数も分からないとなると、残るは…―――。



「これでいいか?」

「あんまり参考にはなんなかったけどな」

「風紀の存在がトップシークレットなのはお前も知っていたことだろう」

「はいはい、知ってますよ〜」



テーブルを挟んで戯れ合う2人を横目に、俺は文月さんのシャツを引っ張って強制的に話を遮りこっちを向かせた。
何故かその時の文月さんの顔が赤かったけど、俺はそれをスルーして新たに浮上した疑問をぶつけた。



「文月さん」

「っ、……ど、した?」

「さっき風紀には報告義務がないって言ってたけど、それって本当?いくら風紀に実質的権力があったとしても高校生が個人を勝手に退学にさせたら各方面から苦情が来るんじゃないの?それこそ理事長である文月さんに説明が求められるはずだ。流石に概要を知らないまま説明するなんていくら文月さんでも不可能でしょう?」

「確かに問題を起こして退学になった者の家には俺様から書面を送っている。あくまで形式上の定型分をな。だから特殊な事案じゃない限り全員同じ文面なんだよ」

「じゃあ本当に風紀から何の説明もないの?気付いたら在校生が減ってるって感じなの?そんなのホラーじゃん」

「報告義務がないのは本当だ。形式上はな」



やっぱり…。



「お前が言うように何の報告もなしに勝手に生徒が消えてたらホラー…と言うより普通に事件だから。それは向こうも分かってんだろう。だから実際は退学者が出る度にメールで連絡が来ていた。しかもご丁寧にある一定の時間が経つと勝手に消去されるメールがな」

「……何それ?徹底しててキモ」

「ああ、用心深い連中だ。だから俺様の手元に奴等からのメールは何一つ残っていない。解析してまではいないが、どうする?やってみるか?」

「いいよ。そこまで用意周到な連中が最後にドジ踏むとは思えないからね」

「確かにな」

「てか、そう言うことは最初に言ってよ。それだって結構重要なことじゃん」

「裏付けるもんが何一つないから言っても仕方ねぇと思ったんだよ」

「それでもどんな些細なことでもいいから教えて。不要かどうかは俺が判断する」

「わ、わーったよ!(コイツ、急にマジな顔しやがって…)」



可笑しなことを言ったつもりはないのに、またもや文月さんは急に顔を赤らめて焦ったように声を荒げた。
俺は気付いていなかったのだ。そのまともなことを言ったせいで文月さんが俺の顔に見惚れていたことに。
そんな俺達のやり取りを思慮深く見つめる飛鳥院さんのことも。


< 284 / 651 >

この作品をシェア

pagetop