歪んだ月が愛しくて2
確信
頼稀Side
「つまんない……つまんないつまんないつまんなーい!!」
「うっさい!喚くな!」
現在12時15分。
昼食時の混雑した北棟の食堂において、未空は突然訳の分からないことを叫び出した。
「どうしたの未空くん?」
「何か奇声を上げてるね」
「勉強のし過ぎかー?」
「コイツが勉強するわけないだろう。さっきの授業中もずっと寝てたし」
「それはいつものことだろう」
「で、結局何が原因なわけ?」
食堂に集まっているのはいつものメンバー。
俺と希・未空・葵、向かいには汐・遊馬・御手洗の順番で座っている。
「だってリカがいないんだよ!つまんないじゃん!」
「「「「「(やっぱり…)」」」」」
「はぁ…」
今日、立夏は学校を休んだ。
理由は昨日(正確に言えば今朝)のあれが原因だった。
「仕方ないよ。風邪なんだから」
そう言って未空達には嘘を吐いた。
まあ、紀田は気付いてると思うけどな。
「立夏が風邪なんてここに来て初めてじゃね?」
「バカは風邪引かないって言うのにね」
「リカはバカじゃないよ!俺の方がバカだもん!」
「えばんなよ」
「どっちもどっちだと思うけど」
「でもいくら風邪でも心配だよね。昨日は普通だったのに」
「だよな…」
「汐は違う意味で心配なんだろう?」
「ち、違う意味って何だよ!?」
「さあ、自分で考えれば」
それと汐と遊馬も。
直接説明はしてないが、昨日の今日だから大体の察しは付いているだろう。
「そう言えば未空くん、さっき立夏くんのところに行ったんでしょう。どうだった?会えた?」
は?
「行ったって…、まさか立夏に会ったのか?」
「会ってないよ。何度かノックしたんだけど全然応答なくてさ」
「それで諦めたの?未空にしては珍しいじゃん」
「いつもなら諦めないよ。でもリカが風邪だって聞いてたし、体調悪くて寝てると思ったから…」
「賢明な判断だね」
「仙堂にしてはね」
「俺にしてはってどう言うこと!?」
風邪を理由にしたのは、そう言えば誰も不用意に立夏の部屋に近付かないと思ったからだ。
それなのに未空と来たら余計なことしやがって。野生動物には常識が通用しないのか。