歪んだ月が愛しくて2



「でもまた後で様子見に行こうと思ってるんだ。さっきから電話してるのに全然出ないから心配でさ」

「え、いや…、それは…」

「風邪引いてるんだからそっとしてあげなよ」



汐と遊馬は遠回し立夏に接触しないように牽制する。
でもそれに気付かない未空は立夏に会う気満々だった。



「でも、やっぱり心配だから…」

「やめろ」



俺は未空の言葉を遮って言い放つ。
すると未空は少し意外そうな顔をして俺を見つめた。



「何で?」

「相手は病人だ。遊馬の言う通りそっとして置いてやるのが本人のためだろう」

「………」



そう言うと未空はスッと目を細めて俺の言葉を待った。



「何だよ」

「………」

「言いたいことがあるなら聞くぞ」

「……それだけ?」

「は?」

「本当にそれだけが理由?」

「他に何がある?」



本当のことを説明する必要はない。
立夏がそれを望んでない今は。



「立夏のためを思うならそっとして置け」

「……ずる」



本当にな。



「別に言いたくないなら言わなくてもいいけど…」



未空は不貞腐れたように小さな声で呟く。
でも同じテーブルに着いている俺達には丸聞こえだ。



「でも俺だってリカのことが心配なんだからな」



そう言って未空は拗ねたように俺から顔を背けてテーブルに額を付けた。



「……分かってる」



未空の立夏に対する想いを疑ってはいない。
ただ今の立夏の状況を説明するには昨日のことを説明しなきゃいけないわけで、そんなこと立夏は絶対に望んじゃいないんだよ。
例え真実を知った未空が立夏を拒絶しなくても…、まだ話せない。俺の口から話すべきことではない。


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