歪んだ月が愛しくて2



「「「キャァアアア!!!」」」



突如、食堂内に猿のような奇声が響き渡る。



「この奇声は…」

「まさかっ」

「相変わらず動物園みたいだな」

「同感」



猿共がギャーギャー喚くと言うことは…。



「あれ、尊?」



嫌な予感は見事に的中した。
案の定、食堂に現れたのは我が学園の生徒会長様で去年のKINGランキングNo.1の神代尊だった。
滅多に姿を表さない人間がこんな公共の場に突然現れたらそりゃ猿共も喚くはずだ。
神代会長は食堂に足を踏み入れるなり、キョロキョロと周囲を見渡して誰かを捜しているようだった。普通に考えれば覇王の誰かだが…。
すると未空は椅子から立ち上がって「おーい、みーこ」と、手を振りながら神代会長を呼び寄せた。



「み、尊様がこちらに…っ」

「何しに来たんだろうね?暇なのかな?」

「誰かを捜しているように見えたけど」

「捜してるって…」

「誰を?」



………まさか。



「どうしたの?みーこが1人で食堂に来るなんて珍しいじゃん。誰か捜してんの?」

「……アイツは、一緒じゃないのか?」

「アイツ?」

「りっ…「立夏ならいませんよ」



俺は神代会長の言葉を遮って立夏がここにいないことを強調する。
すると神代会長は俺の口調が気に入らなかったのか眉を顰めて睨み付けて来るかと思えば、俺を視界に捉えるなりスッと目を細めた。



何だ?



「立夏くんでしたら、今日は風邪を引いて休んでいます」

「風邪?」



神代会長の眉間の皺が深くなる。



「……お前のところに連絡が来たのか?」

「ううん。風邪のことは紀田ちゃんから聞いたんだ。俺も心配だったからリカの部屋に行ったり何度か電話したんだけど繋がらなくて…」

「き、きっと、体調が悪くて寝込んでいるんだと思います!」

「心配すんなよ未空。きっと夜になったら連絡来るって」

「だといいけど…」

「………」



しょんぼりと項垂れる未空とは打って変わり、神代会長は黙り込んだまま何やら深刻な表情を見せる。
元々何を考えているか分からない人種なだけにその表情がどうも引っ掛かる。



「つまり、今日は立夏に会ってないんだな?」

「うん」



ただ一つ確かなのは、神代会長が立夏を捜していることだけ。



何の用で?



昨日の今日だけに、嫌な胸騒ぎがする。


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