歪んだ月が愛しくて2



「それで、話って何ですか?」



話があると言われて連れて来られたのは、何故か生徒会室だった。



「俺をここに招いたってことは、余程他の人間に聞かれたくない話なんですね」



そうでなければ態々こんなところに連れて来ないだろう。
話なんてどこでも出来る。それこそ食堂の外だって構わないはずだ。それが立夏に関することでなければ。



「まあ、どうせアンタが知りたいのは立夏のことなんでしょうけど」



それには確信があった。
寧ろ立夏に用がなければ、神代会長が態々1人で滅多に姿を見せない食堂に現れるはずがない。
そのくらい神代会長は立夏に執着している。本人に自覚があるかどうかは知らないが。



(……いや、もう自覚してるか)



そうでなければあんなに必死になって立夏を引き止めるはずがない。



「……昨日、」



昨日?

立夏のことじゃないのか?



「お前、どこにいた?」



一瞬、何を聞かれているのか分からなかった。



ゴクリと、無意識に唾を飲み込む。



何故、神代会長が昨日のことを…。



いや、そんなはずない。



そんなはず…。



考えれば考えるほど、嫌なループに思考が嵌る。



「どこ、って」

「東都にいたな」



神代会長は気付いていた。

それも何らかの確信を持って。



見られたのか?

いつ?どこで?どの場面を?



ツーッと、嫌な汗が額を伝う。



「昨日、偶然俺も東都にいた。そこでお前()を見掛けた」

「、」



やっぱり見られていたのか。
通りで確信めいた口調なわけだ。
でもだとしたらいつ見られていたんだろうか。
昨日は“鬼”の奇襲と立夏のことで手一杯だったとは言え、俺が神代会長の気配に気付かないはずがない。相手がこちらに気付いたなら尚更だ。


< 294 / 651 >

この作品をシェア

pagetop