歪んだ月が愛しくて2
神代会長の真意は分からない。
ただ王様の一時の戯れじゃないのは分かる。
でも俺に言えることは一つだけだった。
「悪いけど、俺の口からは何も言えません」
言えない。
言えるわけがない。
「それが答えか?」
「ハッ、察しが良いですね」
話が早くて助かる。
いつぞやの2トップバカの時は話が噛み合わなくて苦労したからな。
「言えない理由があるのか?」
「……ありますよ。でもそれを聞いて後悔するのはそっちだ」
「どう言う意味だ?」
だから言えないって言ってんのに。
『見捨てるくらいなら、端っから迎えに行ったりしねぇよ』
まあ、今のところ約束は守ってくれてるみたいだし。
「一つ、忠告するなら…」
ヒントくらいなら、あげてもいいだろう。
「今のままだと、アイツ………消えますよ」
「、」
全ては話せない。
でもこのままだと立夏は絶対に消える。あの時のように。
俺の言葉を理解した神代会長は重苦しい表情を浮かべたまま言葉を閉ざした。
それをいいことに俺は何も告げることなく静かに生徒会室を後にした。
今の忠告も、半分は無意味だ。
いくら覇王が立夏を手放さなくても、立夏は自分の正体がバレたら猫のようにしなやかに姿を消してしまうだろう。
あの日を繰り返さないために。
そのためなら情が沸いた相手でも簡単に切り捨てる。
立夏は昔からそう言う奴だった。
俺は当事者じゃないけど知っている。
立夏の忌まわしい過去も。
忘れたくても忘れられない、消し去りたい過去も。
『お前が“風魔”を受け継ぐにあたり、話して置かなければならないことがある。…いいか、これは“風魔”の大罪だ』
そっと、静かに瞼を伏せる。
もう二度と、あんな顔をさせてたまるか。
あんな想い、絶対にさせない。
無意味だろうが、何だろうが、この際何にだって縋ってやる。
我ながらバカらしいと思う。
でも彼等に賭けてみたい。
覇王に―――いや、神代尊。
「期待、させてくれよ…」