歪んだ月が愛しくて2
尊Side
「今のままだと、アイツ………消えますよ」
そう言い残して風魔は生徒会室から出て行った。
……どう言う意味だ。
消える?立夏が?
俺が昨日のことを問い詰めたら、立夏は俺等の前から姿を消すと言うのか?
それが立夏の心の澱なのか?
……分からない。
何が正しくて、何が間違いなのか。
間違いたくは、ない。
大切だから。失いたくないから。
「クソッ」
どうすりゃいいんだ。
どうすれば何も間違えずに、何も失わずにいられるんだ。
『お前には、その覚悟があるのか?』
ムカつく声が脳裏に過ぎる。
かつて嘲笑った言葉が不条理にも自分に降り掛かる。
……だが、お陰で頭が冴えて来た。
くだらねぇ。
何を迷ってたんだか。
何が正しくて何が間違いかなんて誰にも分からない。分かるはずがない。
それが自分にとって大切な存在であればあるほど、空回りして間違える時だってあるだろう。
でも、それがどうした。
間違えたっていいじゃねぇか。
何もしないで大切なものを失うくらいなら、間違ってでも、みっともなく食らい付いてでも、諦めなければいいだけの話だ。
「離さねぇって、決めただろうが…」
グッと、自分のスマートフォンを握り締める。
そんなものはただのエゴだと、批難してくれて構わない。
自分本位な解釈だってことも自覚している。
立夏のためを考えたら他にも良い策があるかもしれない。
でも、誰にも奪われたくなかった。
それが立夏自身だとしても。
何よりも、誰よりも、大切な存在だからこそ―――。
「とりあえず捕まえるか…」
スマートフォンの連絡先から「藤岡立夏」の名前を探して画面に表示された電話番号を指で押した。