歪んだ月が愛しくて2
文月Side
「憎たらしい、か…」
俺はリツを哀に任せて仮眠室に戻った。
本当なら部屋まで送り届けたいところだが、俺が動くと何かと目立つ上に今後のリツの生活に影響を及ぼしかねない。
その点、理事長代理として普段から学園内を巡回している哀ならリツと一緒にいても不自然じゃねぇし、何より俺も安心してリツのことを任せられる。
「素直じゃないな」
仮眠室の扉を開けると、能面ヅラの悠がコーヒーを飲みながら俺の戻りを待っていた。
俺は悠の向かいに座って太々しい態度を前面に出して足を組む。
「……聞いてんじゃねぇよ」
「聞こえたんだ」
「どうだか」
相変わらず何考えてるか分からない顔してんな。
学生時代の“冷血鉄仮面”そのままだ。
「彼は大丈夫なのか?」
「聞こえてたんなら分かるだろう」
「持病か?」
「そんなんじゃねぇよ。あれは…」
『ふーくんなんて…、アンタなんて大嫌いだ!』
「……俺のせいだ」
「お前の?」
『……俺様も、お前みたいな奴は大嫌いだよ』
「全部、悪いのは俺なんだ…」
「………」
全てはリツを生かすために選んだ道だった。
でもそれが間違いだと気付いた時にはもう手遅れで。後戻り出来ないところまで堕ちて、堕ちて…。
もう俺だけではどうすることも出来なくなっていた。
「……凄いな」
「は?何がだよ?」
「いや、お前にそれほどまで想われてる彼が凄いと思ってな」
「………」
悠と芳行は知っている。
「今も好きなのか?」
俺がどれほどリツのことを想っているか。
「……悪いかよ」
「いいや」