歪んだ月が愛しくて2
「お前の一途さには頭が下がる。よく10年以上もただ1人の相手を想い続けていられるものだ」
「お前に頭下げてもらっても嬉しくねぇよ」
「しかもそれが初恋だから質が悪い」
「煩ぇ」
「彼のどこが好きなんだ?」
「あ?」
「勘違いするな。別に彼を愚弄する気は更々ない。この短時間だが彼の人となりはそれなりに分かったし、とても良い子だと俺も思う」
「だったらそれでいいだろう。態々小っ恥ずかしいこと言わせんじゃねぇよ」
「いや、だからこそ知りたい。お前の心を10年以上も繋ぎ止める彼のことが」
「……性格悪ぃな」
リツのどこが好きかなんて、そんなの全部に決まってる。
ただそんなこと本人に言えるわけもなく、ましてや第三者に聞かせてやるつもりもない。
「そう言うお前はどうなんだよ」
「俺か?」
「人のことばっか根掘り葉掘り質問して来やがって不公平だろうが」
「ガキか」
「煩ぇ。いいから答えろよ」
「答えろって何を?」
「だから付き合ってる女はいねぇのかって聞いてんだよ」
「………いないな」
「何だよ、その間は?」
「付き合ってる女はいないが、付き合ってる男ならいる」
「へー、堅物のお前らし……………は?」
「だから相手ならいると言ったんだ、性別は男だがな」
「は、……はあぁあああああ!?」
「煩いぞ」
いやいやいやいや、まさかのまさかだろう。
よりによって一番有り得ない奴が有り得ないことを言っている。しかも平然と真顔で。
「あ、あああ相手は!?歳はいくつだ!?人間か!?」
「喧嘩売ってるなら買うぞ」
「バカ!こっちはマジで聞いてんだよ!」
Vuuu…。
そんな時、どこからか振動音が聞こえた。
俺は悠に視線を向けるが、悠は「俺じゃないぞ」と言って逆に俺に自分の電話を確認するように促した。
「俺でもねぇよ」
「……あれじゃないか?」
ベッドを指差す、悠。
そこにはタオルケットからちょこっと顔を出す黒色のスマートフォンが見えた。
「彼のじゃないのか?」
「ああ、俺が買ってやった奴だ」
一向に鳴り止まねぇところ見ると……電話か?
それにしてもしつけぇな。
「出ないのか?」
「……嫌な予感がする」
「彼が探して掛けて来たんじゃないのか?」
「そうかもしれんが…」
リツのスマートフォンを手にとってディスプレイを確認すると、そこにはこの世で2番目に忌々しい名前が表示されていた。
「……最悪だ」
何でコイツがリツに掛けて来んだよ。
「切れるぞ」
寧ろ切れてしまえ。
「いいのか?」
「………チッ」
悠の声に促されて、俺は渋々リツのスマートフォンを耳に当てた。