歪んだ月が愛しくて2
『立夏っ、お前今どこにいる!何でとっとと電話に出ねぇんだよ!』
この忌々しいムカつく声。
一方的に捲くし立てる口調に苛立ちを募らせながら、どう反応してやろうかと模索していた。
『おい、聞いてんのか!?』
「……生憎、リツはここにはいねぇよ」
『っ、鏡ノ院か?何でテメーが立夏のスマホに…』
「忘れ物だ」
『……そこにいたのか?』
「ああ。さっきまで俺様のベッドですやすやとおねんねしてたぜ。昨日の夜は相当ハードだったから疲れてたんだろうな」
『テメー…』
「フン、そうおっかねぇ声出すなよ。天下の神代とあろう者がたかが同性のガキに心乱されるなんてみっともねぇな」
『アイツは今どこにいる?』
チッ、否定しねぇのかよ。
皮肉言ってるこっちがバカみてぇだろうが。
「知らん」
『隠してんじゃねぇよ』
「ここにいないのは本当だ。哀に部屋まで送らせたから今頃自分のベッドで寝てんだろう」
『部屋か…』
「おい、アイツに会いに行くんじゃねぇぞ」
『テメーに指図される筋合いはねぇよ』
「こっちはマジで言ってんだ。せめて今日だけは…」
『会長に見られた、と思う…』
「アイツに、会うな」
リツは自分の正体がバレた時のことを考えていた。いや、覚悟していた。
そんな覚悟はする必要がないし出来ることなら捨ててもらいたいくらいだ。
でも「自分のケツは自分で拭く」がモットーのリツにとって、その覚悟を捨てるって考え自体ないんだろう。
だからこそ無闇に探られるわけにはいかなかった。特にコイツには。
『どう言う意味だ?』
「それはテメーが一番良く分かってんじゃねぇのか?」
『………』
だんまりか。
と言うことは、少なくとも心当たりがあるってことか。
つまりリツが言うように、神代に見られたってのはどうやら間違いないようだな。
『……何か知ってんのか、昨日のこと?』
……厄介だな。