歪んだ月が愛しくて2
それだけ言って神代は一方的に電話を切った。
ツーツーと、無機質な音だけが耳に残る。
「……どうした?」
「………」
柄にもなく俺を気遣う悠の声が聞こえる。
しかし神代の言葉が邪魔して反応出来なかった。
「“神代”と呼んでいたが、まさかあの神代か?」
悠は俺の返答を待たずして言葉を続ける。
俺が反応しないことをいいことに、それを肯定と受け取ったようだ。
「まさか、お前の恋敵があの神代とはな」
「……煩ぇよ」
俺が、光に目が眩んでいるだと?
アイツのことを何も見えてないって言いたいのか?
「ふざけやがって」
俺は何も履き違えていない。
俺がやっていることは間違っていないはずだ。
「俺は、間違ってない」
一か八かではダメなんだ。
安全かつ確実に守れる方法でなければ。
あれだけ苦しんで、あれだけ我慢を続けて来た立夏を、一か八かの方法に賭けて他人に任せることなんて出来るわけがない。
(それも、アイツなんかに…)
リツが覇王を信じようとしていても、俺には無理だ。
俺には赤の他人の奴等を無条件に信じられるほど盲目してない。
何せ覇王が立夏を救ってくれると言う保障はどこにもないのだから。
任せられるものか。
100パーセントの保証がない限り、俺は覇王の存在を認められない。
「何が正しくて、何が間違っているかを決めるのは自分自身だ。自分の行いを間違っていないと豪語するのなら、誰にも惑わされぬよう心を強く保つことだ」
「心、だと…?」
「それが出来なければ、光に目を焼かれて闇に溺れることになるぞ」
「ハッ、知ったようなこと言いやがって」
「独り言だ。聞き流してくれて構わない」
「……でけぇんだよ」
闇に飲まれたって構わない。
立夏の闇を肩代わりすることが出来るなら、立夏がこれ以上苦しまずに済むのなら。
俺は何を犠牲にしてでも、お前を守りたいんだ。