歪んだ月が愛しくて2



それから数分後。



「り、立夏くんっ!か、か、かかかわ…っ」

「立夏くん格好良い!」

「本当だ。凄く似合ってるね」

「初めて立夏が男に見えたよ」



どう言う意味じゃコラァ。



「……無駄に似合ってるぞ」

「まあ、悪くないんじゃない」



そう、アゲハが用意したとっておきのものとは、黒の学ランだった。
空き教室で着替えさせられた後、何故かクラスメイトの前でお披露目する羽目になったのだが。



「ふ、藤岡くん!マジで格好良いよ!冗談抜きでヤバいって!」

「似合い過ぎでしょう!てか、サラシとかエロ過ぎ!どう言うつもり!?俺達をどうしたいのさ!?」

「ヘソチラしてるぅ〜♡えっち過ぎるぅ〜♡」

「筋肉とか一切なさそうな体型してるのにガッツリ割れてんだけど!ギャップえぐっ!そんなんされたら誰だって惚れてまうやろおおおお!」

「ああ!その足で俺を踏んでくれぇえええ!」

「ケツで抱いてぇえええ!」



……うん、聞かなかったことにしよう。



粟立つ鳥肌に腕を摩りながらパタパタと手で仰ぐ。
アゲハに手渡された学ランは何故かサイズぴったりで若干顔を引き攣らせたが、アゲハに手伝ってもらって何とか着替えることが出来た。ジャージと体操服を脱ぐだけだったら簡単だけど、上半身にサラシを巻く作業が中々上手く出来なくてアゲハにやってもらったのだ。そこからは1人でも出来た。サラシを巻いた上から学ランを羽織って、同じ色で合わせた白の鉢巻と襷を装着して、はい完成。
初めて着た学ランは意外にもサラサラとした生地で着心地が良く、下手にジャージを着てるよりも過ごし易いかもしれない。
でも長袖の学ランはやっぱり暑い。蒸す。しかも黒だから余計に暑く感じる。
袖を肘まで捲くっても、前のボタンを全開にしていても、暑いものは暑かった。



どうしよう、早く脱ぎたい。



そんなことを考えながら手で仰いでいれば、左右からドスンッと衝撃が飛んで来た。



「リ、リカっ!かっ、かかかか格好良いぃいいい‼︎カッコいいカッコいいカッコいいカッコいいいいい!だーいすきいいいいい!!」

「ああ、何て美しいんだ!やはり僕の目に狂いはなかった!ここまで完璧に着こなしてしまうとは流石駒鳥だね!」



何かもう怒る気にもなれない。

どうにでもしてくれ。



蒸し暑さと俺に引っ付いてる2人が鬱陶しくて徐に前髪を掻き上げると、どこからかバタバタと音がした。



「はぅ」

「う、美しい…」

「エロ過ぎるぅ…」

「もうダメ…、死ぬ」

「俺の人生一片の悔いなし…。あ、でも最後一回でいいから踏んで欲しかった…」



何か続々と倒れてんだけど何これ?寸劇?

碌でもないこと考えてないで病院行って来いや。


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