歪んだ月が愛しくて2
「あ、その学ランって、もしかして応援団の…」
鬱陶しいことにクラス中が俺の学ラン姿を絶賛する中、みっちゃんは思い出したかのように小さく声を漏らした。
「応援団?」
「そうとも!邦光は察しがいいね!」
「いいね、じゃなくて応援団の説明をしろよ」
ドスッと、アゲハの鳩尾を肘で突く。
するとアゲハが腹部を押さえて静かになってしまったので、俺はみっちゃんに説明をお願いした。
「ほら、この前実行委員会に出た時に有志で応援団を作るかどうかで協議したでしょう。あれは去年も同じように応援団を有志で募ったからなんだよ」
「それは覚えてるけど、でも結局作らないってことになったよね?」
「正式にはね。でも有志でやる分には構わないって結論に至ったから、去年に引き続き応援団長様が君をスカウトしに来たんじゃないの?」
「……は?」
応援団長?
スカウト?
……まさか。
「お、れ…?」
悲しいことに、クラスメイト達が一斉に首を縦に振った。
マジか。
「アゲハはね、C組の応援団長なんだよ」
「自称だけどな」
「九條院先輩はお祭り好きだもんね。こう言う学園行事にはいつも人一倍積極的でC組全体を引っ張ってくれるんだよ」
「ご愁傷様」
おうふ。
未空達のニヤニヤした笑みが俺に「諦めろ」と訴え掛ける。
……いや、待てよ。
例えアゲハが応援団長だとしても直接スカウトされたわけじゃないし、俺なんて全然映えない地味野郎だし、ましてやオタクヤンキーって変なあだ名まで付けられちゃってるから俺がいるとC組全体が悪目立ちしちゃうから端っから眼中にないよね。あるわけないよね。皆の勘違いだよね、ねっ。
「よく似合っているよ」
「っ、」
金糸の長い髪が、さらりと頬に当たる。
耳元で低い声に囁かれた瞬間、反射的に身を翻した。
教室の隅まで走り、サッと壁を背にして身構える。
よく分からないが、俺の中で何かが強く警戒を促していた。
逃げた方がいいと言う本能のままに行動した結果、アゲハは笑いを押し殺すようなに肩を揺らした。
「そんなに慌てて逃げるなんて可愛いね」
揶揄われた。
クッソ、ムカつくな。
もう一発ぶん殴ってやりたい。