歪んだ月が愛しくて2



第1競技はパン食い競走。
200メートルのコース内に設置された物干し竿から紐付きの洗濯バサミで吊るされたパンを、手を使わずに口でキャッチしてゴールを目指すと言うものだ。
出場するのは未空と汐。2人は既に入場ゲートに集まっていて聞き慣れた喧しい声が応援席の方まで届いていた。



元気だね。それだけ元気があれば勝てるよね。

てか、もう俺の応援とかいらなくない?

2人なら自力で勝てるでしょう。



「てか、何これ?」



振り返ると、何故か後ろには数十人のオーケストラが控えていた。



「アゲハさんが雇ったプロのオーケストラだ」

「何で?」

「雰囲気出るから、だとさ」

「出過ぎだろう…」



たかが学校の体育祭にプロのオーケストラを呼ぶとか仰々しいわ。
金持ちのやることは突拍子過ぎて訳が分からん。



「リカー!」



その声に反応して振り返ると、未空が俺に向かって手を振っていた。



「俺頑張るから応援宜しくねー!」



どうやら応援は必須らしい。

全く、我儘なのか甘えてんのか。



未空に続いて汐も手を振ってくれた。



「立夏くーん!絶対勝つから見ててくれよなー!」



2人して大声で人の名前を叫ばないでくれ、恥ずかしい。



「負けたら承知しねぇぞ…」



俺の小さな声は未空と汐には届かない。
その代わり俺も2人に手を振って小さな想いを届ける。



「……よし」



吹っ切れた。
いや、こうなったらヤケだ。
みっちゃんが言うように、偶にはクラスのために貢献するのも悪くない。
皆がドン引きするくらい無駄に騒いで派手に応援してやる。










パァンッと、グラウンドに銃声が轟いた。


< 318 / 651 >

この作品をシェア

pagetop