歪んだ月が愛しくて2
ギャーギャーと喧しさを増す2人を横目に、俺は自分から沖田先輩に近付いた。
「……沖田先輩」
「ん?」
一瞬、沖田先輩は俺が自分から近付いて来たことに驚いた様子を見せたが、それを悟られまいと平静を装い対応した。
……ふーん。
「何を思って俺と仲良くしたいって言ってんのか分かんないけど、俺と仲良くしたって何の得にもならないよ?」
「いや、得って…。別に自分の市場価値を上げるために友達になりたいんじゃないんだけどな。てか、立夏って自分の価値全然分かってねぇのな」
「価値?」
「あー…分かってたらそんなこと言わないか…」
「……よく分かんないけど、それでもいいわけ?」
「え?」
「だから、そんな俺でもいいのかって聞いてんの」
直後、沖田先輩が目を丸くさせて俺を凝視した。
「いい、の…?」
あれ、そう言う反応しちゃう?
困惑の中に見える嬉々とした表情に、無意識に口角が上がる。
(へぇ…、結構可愛いところあるじゃん)
沖田先輩のこと見誤ってたかも。
第一印象で判断しちゃダメだな、うんうん。
「いいよ」
「、」
ゆるりと、口元が緩む。
「でも…」
沖田先輩の肩に手を置いて背伸びする。
俺の顔は必然的に沖田先輩に近付いて、ほんのりと赤くなった耳元で囁いた。
「覚悟、ある?」
「―――、」
それから遊馬に迎えに来てもらって喧しい未空と汐を強引に席に戻らせた後、俺達応援団は第2競技の準備に取り掛かった。
その傍らでアゲハと頼稀、そして沖田先輩が人知れず何やら話していたが、敢えてそれをスルーして見て見ぬふりを決め込んだ。
だって、彼等はきっと…。
「で、どうでした?初のナンパは?」
「……返り討ち、された」
「だろうね。彼は一筋縄ではいかないから」
「無闇に手を出したら痛い目を見るって、アゲハさんに忠告されてましたよね?それで無謀にも正面から突っ込んでこの様ですか?情けない」
「何とでも言ってくれ」
「これに懲りてアイツに手を出すのはやめて下さいね。おまけに煩いのが付いて来るんで」
「……いや、無理」
「は?無理って…」
「チャチなナンパは失敗したけど、あんな風に煽られて挑発されて見す見す諦めろって?んな勿体ねぇこと出来っかよ」
「おやおや」
「……何やる気にさせてんだよ、あのバカ」
「全くだね。彼を堕とすつもりが逆に堕とされるとは…、流石僕の敬愛する駒鳥だ」
「感心してる場合じゃありませんよ」