歪んだ月が愛しくて2
「おーい、頼稀ー!立夏ー!」
その声に顔を上げると、入場ゲートから手を振る希の姿があった。
「おう…」
「ガ、ガンバレー」
明るい声で元気一杯に手を振ってくれた希には申し訳ないが、俺達は気まずさと居た堪れない気持ちから目を合わせることが出来ず、控え気味に手を振り返した。
当然希の頭上にはクエッションマークが浮かんでいたが、隣にいた誰かに声を掛けられて俺達から視線を逸らした。
チラッと、懲りずに頼稀の顔を盗み見る。
そこには先程までの恥ずかしそうに赤面した顔はなく、知らない誰かと話す希を面白くなさそうに見つめる頼稀がいた。
あーあ、全然隠せてないよこの人。
誰だよ、頼稀のことクールとかポーカーフェイスとか言った奴。
眼科行った方がいいんじゃねぇの。
………あ、俺か。
「チッ」
仕舞いには舌打ちまで。
ブスッとした表情は未だ健在だった。
「……面白くない?」
「っ、何で!?」
「いや、見てれば分かるでしょう」
何で今まで気付かなかったんだろう。
こんなに分かり易くて、隠そうとしてても全然隠し切れてない想いに。
「……言うなよ」
「誰に?」
「誰にもだよ」
「言わないけどさ…」
「けど、何だよ?」
「いや、多分皆も気付いてそうだなと思って」
「っ、な、んで!?」
ゴホッゴホッと、頼稀が咽せて咳込む。
「だって頼稀分かり易いんだもん。今まで見たことないくらい顔に出てるし、出会って半年も経ってない俺が分かったんだから付き合いの長い皆はもっと前から気付いてんじゃねぇの?」
「わ、かり易い…?俺が?」
「うん、分かり易いね。希のことに関しては」
「………」
「それでちゃんとポーカーフェイス出来てると思ったら大間違いだよ。もう一度鏡見て作り直した方がいい」
「酷ぇ言われようだな…」
「事実だからね」