歪んだ月が愛しくて2
「はぁ…」
俺の隣でブツブツと独り言を繰り返す、頼稀。
「どんだけ落ち込んでんだよ。もうすぐ競技始まるぞ」
「はあぁああああ…」
「いや、溜息深過ぎでしょう」
パァンッと、銃声が轟く。
一番最初にスタートしたのは山田だった。
一斉に走り出す選手の中で先頭に躍り出た山田は最後までトップを譲らず、そのままゴールテープを切った。
流石、陸上部。
そんなに足早いならリレーのアンカーもやって欲しいんだけど。
今からでも代わってくれないかな?
その後、山田に続いて野津と木村も順番にスタートした。
2人の結果は惜しくも2位だったが、2人は「藤岡くんごめんな!」と言って態々俺の元まで報告に来てくれた。
そんな2人を責める者は誰もいない。勿論俺だって。
「何謝ってんの?野津も木村も2位取ってくれたじゃん。それって凄いことだよ。クラスの皆のためにありがとう。本当お疲れ様」
そう言うと何やら2人は感極まってしまい、大して大きくもない瞳に涙を溜めて嗚咽を漏らした。
そんな2人を山田に任せて応援席に戻らせた後、次の応援に備えてスタートラインを確認した。
「あ、次希じゃん」
「……ああ」
おうおう、ガン見ですか。
頼稀の奴、絶対希の走る順番リサーチしてたな。
『続いて第6走者をご紹介します。1年の部、S組……A組……B組……C組佐々山希くん、D組…』
葵の声が拡声器から流れる。
いよいよ希がスタートする番だ。
「あのさ、希って足速いんでしょう。どのくらい速いの?山田くらい?」
「……見ていれば分かる」
希がクラウチングの体勢に入る。
『位置について、よーい』
銃声が鳴り響いた直後、5人は一斉に走り出した。