歪んだ月が愛しくて2



「じゃあ俺も未空達んとこ戻るわ。次の競技もちゃーんと応援してくれたまえよ、皆の衆」



下手なモノマネで頼稀をおちょくった後、希はクラスの応援席へと戻って行った。



「マジで何様だよアイツ」

「あれって誰のモノマネ?」

「……アゲハじゃないの?」

「ふむ、中々の出来じゃないか」

「佐々山くんは見所がありますね」



どこがだよ。



三橋先輩の言葉に内心ツッコミながら希の後ろ姿を目で追った。
特に意味はなかったのだが、そんな俺に気付いた頼稀が「…おい」と声を掛けて来た。



「見過ぎだ」

「あ、ごめん」



……ん?



あれ、何で俺が謝んなきゃいけないの?



「さあ、午前の部も残り僅かだ。C組の勝利のために我々の力を存分に振るおうじゃないか」

「はい!九條院様のために精一杯努めさせて頂きます!」

「いや、アゲハさんのためじゃなくてC組のためだって」

「場所変えますか?」

「次は1000メートル走だから移動した方がいいね」



応援団の列が乱れる。



(……話すなら今か)



次の競技が始まるまでの僅かな間、俺はアゲハと頼稀の腕を掴んで足を止めさせた。



「立夏?」

「どうしたんだい?」



2人は大きなリアクションを取ることなく、俺の言葉を待っていた。



「―――気を付けろ。鼠が潜り込んだ」

「、」

「……おやおや」



途端、頼稀の表情が強張る。
アゲハも口調は柔らかいままだが、一瞬でオーラが変わった。



「鼠の正体は分からない。でも誰かが潜り込んだのは間違いない」



あの時感じた、嫌な視線。

あれは確実に俺を敵視する誰かのもの。



鼠の狙いは、俺だ。


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