歪んだ月が愛しくて2



「君の考えは?」

「……標的は俺だと思う。ただ何を仕掛けて来るか分からない。身近な人間…、主に俺と親しい人間に絞って警戒して欲しい」

「まさか、動くつもりか?」

「鼠の狙いが俺である以上、動きたくなくても動かざるを得ないと思う」

「何故、君が狙われていると?」

「何となく」

「立夏、真面目に答えろ」

「真面目だよ。そうじゃなきゃ、こんなこと2人に頼まねぇよ」



俺にも鼠の目的は分からない。
ただ分からないものをいつまでも考えて時間を浪費するより、今ある少ない情報で判断して奴等よりも先に手を打たなければならない。
そのためにアゲハと頼稀に話したのだ。
鼠がどこで目を光らせているか分からない現状で、秘密裏に動けて尚且つ誰も傷付けないで済む方法を選んだ。
それが無関係な“B2”に頼ることだとしても。



「君の考えは分かった。聖学にいる“B2”と傘下を総動員して警戒に当たらせよう」

「頼む」



結局、俺は“B2”を利用した。
これ以上、俺のせいで皆に迷惑を掛けたくなかったのに、やっていることはまるで正反対だった。



誰かが俺を指差して偽善者だと嘲笑う。

誰か、なんて自分が一番よく分かっている。

反論なんて出来やしない。



「何が“動きたくなくても動かざるを得ない”だ。端っから黙って見てるつもりなんかなかったくせに」

「……ごめん」

「思ってもないくせに」

「そんなこと…―――――え、」



ふと視線を上げた時、頼稀の後ろに中央棟の屋上が見えた。

距離が遠くてよく見えないが、誰かがいるのは分かる。



……会長?



眉間に皺を寄せて目を凝らす。



人影が、二つ。

屋上には会長と…。





―――誰?





サラサラと、明るい茶髪が風に靡く。



身長は会長より少し低いくらいの、女性だった。



「、」



二つの人影が重なる瞬間、思わず目を背けた。
見てはいけないものを見てしまった後ろめたさと、これ以上見ていられなかった嫌悪感から。



「駒鳥?」



ハッと、アゲハの声に我に返る。



「あ、いや、ごめん…」

「何か気になることでもあるのかい?」

「いや、そうじゃなくて」

「じゃあ何だよ?」

「………」



チラッと、頼稀に悟られないように再び屋上を見る。
しかし既に会長達の姿はどこにもなかった。



「……何でも、ない」



地面に視線を落とす俺をアゲハと頼稀は心配そうな表情で見つめる。
そんな2人に気付いていながらも俺の頭を支配するのは先程の光景だった。


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