歪んだ月が愛しくて2
◇◇◇◇◇
ゆらゆらと、風が吹く。
邪魔な髪を耳に掛けて、グラウンドにおいて一際目立つ集団を視界に捉える。
風に靡く、黒い髪。
何を考えているか分からない、グレーの瞳。
何色にも染まらない、漆黒の団服。
……ああ、忌々しい。
眼鏡を外せば中性的な顔立ちも、凛とした立ち振る舞いも、奴の存在そのものが忌々しい。
憎い、憎い仇。
だって奴は、あの方を傷付けた。悲しませた。
そして、あの方から全てを奪った。
許せない。
許せるわけがない。
殺すだけでは飽きたらない。
壊してやる。
何もかも。ぐちゃぐちゃに。
二度と立ち上がれないくらい無惨に。
「坊からの連絡は?」
誰かが言った。
待ち切れないと言わんばかりに貧乏揺すりをして、足元にはいくつもの煙草の吸殻が散乱している。
「……まだです」
「いつまで待たせんだよ坊は」
「おい、今どこにいんだって?」
「時期に連絡が来ます。それまでどうかご辛抱を」
「チッ」
何も知らない低脳な番犬共のくせに「待て」も出来ないのか。
彼の番犬は俺だけで十分だ。
俺だけで…。
「貴方の願いは、俺が叶えます」