歪んだ月が愛しくて2
「あの、僕達も自己紹介させてもらってもいいかな?」
その声に少し遠くに座る葵を見た。
葵は椅子に座ったまま小さく手を挙げてそう言った。
「そういや、この前は頼稀に急かされてそんな暇なかったもんな」
「そんなに自己紹介したかったのかよ?」
「そりゃ立夏の弟なんだからお近付きになりたいじゃん。いつの間にか未空は仲良くなってるしさ」
「へっへーん、いいでしょう!」
「何が?どうでもいいから自己紹介すんならとっととしなよ」
「じゃあ僕からね。僕は1年C組の武藤葵です。クラスの学級委員をやってます。立夏くんとは同じクラスで…あっ、ここにいる1年は皆立夏くんと同じクラスなんだよ。宜しくね」
「学級委員長の御手洗邦光。宜しく」
「佐々山希。頼稀とは幼馴染みで同室だから、俺も立夏とはお隣さんね」
「日永遊馬。宜しく」
「花房し…、」
「そしてこの僕こそが3年C組の学級委員長、九條院暁羽さっ!駒鳥の弟君であれば他人じゃないからね、何かあればいつでも僕に声を掛けたまえ!」
「いきなり入って来んなこのバカ!」
アゲハの頭を思いっきりシバく。
突然現れるものだから勢い余って拳で殴っちゃったよ。
しかも汐が話してる途中だったのに邪魔しやがって。汐が可哀想だろうが。
「誰?」
当然、カナは不審者を見る目でアゲハを見ていた。そりゃそうだ。
「九條院暁羽、先輩…。C組の寮長でうちの大将だよ」
「ああ、だから白の長ラン」
「午前中ずっと応援してたから顔だけは分かるでしょう?」
「いや」
「見てなかったの?あんな派手にやってたのに(アゲハだけ)」
「お前しか見てないから他は知らねぇよ」
「………え、」
「………」
「え、とー……ありがと?」
「おう」
……あれ?
俺、間違った?
「くくっ、“お前しか見てない”だってさ。言ってくれるねぇ」
「和解した途端直球?カナちんって見た目に寄らず熱い男だったんだ」
「その想い、1ミリでも立夏くんに届くといいですね」
俺とカナを余所に、覇王はアゲハを捕まえて何やら話し込んでいた。
当然、彼等の声が俺達の方まで届くはずはなかった。
「……お前、態とだろう?」
「さあ、何のことかな。僕はただ午後の競技のことで駒鳥と頼稀に用があっただけだよ」
「白々しい」
「この際無駄は省こうぜ。オメーがここに来た本当の理由は何だよ?今更りっちゃんと風魔に用があるって理由で誤魔化すのはなしだぜ」
「用件を言って下さい」
「ま、話してくれるまで返さないけどね」
「おやおや、せっかちだね」