歪んだ月が愛しくて2



覇王4人とアゲハの会話を横目に、俺は席を立ってカナの耳元でこう言った。



「カナ、話があるんだけど」

「話?」

「うん。出来れば誰にも聞かれたくないからここじゃないところで」

「……分かった」



俺が小さい声で話すと、カナは何かを察したようで俺に合わせて小さい声で答えてくれた。



「ご馳走様。俺先に戻ってるね」

「え、リカ待ってよ!俺も…っ」

「行くぞ」

「え、うそ…っ、走るの!?」



カナは未空の言葉を遮るように俺の手首を掴んで走り出した。
背後から聞こえるいくつもの制止の声を振り切って、俺はカナに導かれるがまま人気のない裏庭まで来た。



「はっ、は…、ここで、いいか?」

「……何か、ごめん。無駄に走らせちゃって」

「別に、こうでもしないと、煩ぇのがついて来そうだったからな」

「過保護なんだよね、約数名」

「ほぼ全員の間違いだろう」

「そんなことないと思うけど…」

「お前は相変わらずだな。自分に向けられる感情に疎い。特に好意にはな」

「そう?」

「そうだよ」



息を整え終えたカナは俺の手首から手を離して、少しだけ距離を取ってから振り返った。



「で、話って何?」

「あー…うん、そのことなんだけど…」

「兄貴のことか?それとも文月?」

「いや、そっちじゃなくて」

「じゃあ何?」



カナはどこか急かすような口調で言う。



「に、西川くんの、ことなんだけどさ…」

「西川?」



するとカナは予想外の人物の名前に驚いた様子を見せた。



「何でリツが西川のこと知ってんだよ?仲良いの?」

「仲が良いってわけじゃないんだけど、ちょっとした事件で知り合って」

「事件?……もしかして、西川が刃物持った奴に襲われそうになったって言うあれか?」

「知ってたの?カナが転入して来る前の話なのに」

「西川から聞いたんだよ。その時助けてくれた奴の話もな」



当時、まだカナは聖学にいなかったからこの事件について知るはずがない。
つまりそれは西川くんが自分からこの話をカナにしたことになる。
どう言う経緯でその話題になったのかは知らないが、それを聞いて少なくとも西川くんがカナに心を開こうとしてくれているのが分かった。



それに、カナの方も。



「……そう言うことか」

「そう言うことって?」

「いや、スゲー無茶苦茶な方法で助けられたって聞いた時はまさかと思ったけど」

「?」

「お前か?オタクヤンキーって」



オタク、ヤンキー…。



あ、忘れてた。



「………てへっ」

「っ、やめろバカ!そう言う顔しても誤魔化されねぇからな!(クッソ可愛過ぎる‼︎)」


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