歪んだ月が愛しくて2
「そんな怒んなくてもいいじゃん。あの時はああするのが最善の方法だと思ったんだよ」
「だからって代わりに自分の身を差し出すバカがどこにいる?」
「ここにいるけど」
「開き直んな!死にてぇのか!?」
「そうじゃないって。本当カナは極端だな」
「お前が自分のことに無頓着過ぎるんだよ!」
「えー、でも俺って自分が一番可愛いと思ってる人種だけど?」
「どこがだ!自分が一番可愛い奴が自分から人質交代申し込むわけねぇんだよ!」
「それはそれ、これはこれだよ」
「大体、他に方法はなかったのかよ。人質交代なんて危険なことしなくても警備員を待てば良かったじゃねぇか」
「警備員もやられちゃったみたいなんだよね。何人か救急車で運ばれてたし」
「職務怠慢だな…じゃなくて、そう言うことじゃねぇんだよ。俺が言いたいのは1人で何でも解決しようとすんなってこと。何かあったら文月や哀に電話すれば良かったんだ。それなのにお前はいつも…」
「……ねぇ、もうこの話やめようよ」
「勝手に終わらせるな。お前のそう言うところ本当どうにかしろよ。自分が一番可愛いって口に出して言うなら最初からそれらしい行動を取ってく、」
「くどい」
「、」
無意識に出た低い声に、カナの肩がビクッと跳ねる。
怒ってるわけではないのだが、カナの口煩い過保護ぶりに辟易した。
一瞬、カナが兄ちゃんに見えた。
血の繋がった本当の兄弟だからカナと兄ちゃんが似てるのは当然だけど、口調はそれほど似ていない。
でも、嫌だった。
カナのせいじゃないのに。
「……確かに、過ぎたことをぐちぐち言っても仕方ねぇけど」
「じゃあこの話は終わりってことで」
「でもっ、」
途端、カナの大きな声によって遮られた。
「心配、したんだからな…」
「………」
そう言ってカナは肩を落として俯いた。
捨てられた子犬のようにしゅんとして明らかに落ち込んでいた。
……いや、違うか。
「ごめん」
そっと、カナの手を取る。
そしてカナの顔を下から覗き込んでもう一度謝った。今度はちゃんとカナの目を見て。
「心配掛けて、ごめんね」
「……うん」
そう言ってカナは俺の首に顔を埋めた。
可愛い。
どうしよう、俺ってブラコンなのかな。
「……何?」
「ん?よしよし?」
「………」
カナの頭を撫でると、カナは不満そうな顔をするものの再び俺の首元に顔を埋めて俺の好きなようにさせてくれた。
(やっぱり、可愛いな…)
カナの甘えたような仕草にかつての仲間を思い出してしまった。