歪んだ月が愛しくて2



「話を戻すけど、この間の野球部3人組が主犯って考えていいの?」

「多分な。クラスでの西川は良い意味でも悪い意味でも普通だし、先公受けだって悪くない。野球部でも練習中は特段変わった様子はないし、寧ろレギュラーメンバーとは上手くやってるように見える。反対に…」

「1年レギュラーの西川くんをやっかむクズがいるってわけか」

「ああ。あの3人のこと調べたら中等部の時は人数合わせでレギュラーだったらしいけど、高等部に上がって当然1年がレギュラーなんて選ばれるわけないって状況で、ピッチャーの西川だけがレギュラーに選ばれたのが気に入らなかったらしい。まあ、あの3人からしたら“お荷物”の西川が自分達を差し置いてレギュラーに選ばれた上に先輩達からも可愛がられてるから面白くないんだろう」

「“お荷物”って言うのは?」

「これは聞いた話だけど、聖学の野球部は結構レベルが低いらしい。そりゃそうだよな。ここは将来が約束されたエリート校だ。部活なんかよりも学力とか将来に関することに重きを置かれるのが普通だ。そんなメンツでいくら試合に向けて練習したって勝てるわけなのに、その責任をピッチャーの西川だけに擦り付けてんだよあの3人組はな」

「あの3人だけ?」

「他の連中は当然の結果だと思ってんじゃねぇの?詳しいことは知らないけど」

「……あの時の西川くんの怯えようからして、多分あれが初めてじゃないと思う」

「中等部の頃からあったと思うぜ。ああ言うクズは生まれ付きだ。しかもあの3人はD組で素行も悪い。噂だとGDって言う不良チームみたいなもんに入ってるらしい」

「GD?」



予期せぬ単語に思わず目を瞠る。



あの3人がGDのメンバー?

我孫子の、駒。



一瞬、まさかと嫌な予感が過ぎった。
でも俺と西川くんの接点を考えたらその可能性は低い。



偶然か?

それとも…。



「GDのこと知ってんのか?」

「……覇王に、敵対するチームみたいなもん。覇王は何とも思ってないけど、あっちには相当恨まれてるみたい」

「覇王って生徒会のあの連中のことだろう。あんなのと一緒にいて大丈夫なのかよ?」



あんなのって…、酷い言われよう。

まあ、本人達も自覚してたけど。



「リツ」



強張った表情で俺を見つめる、カナ。
そんなカナの頭に手を伸ばして、わしゃわしゃと髪を乱した。



「だーい丈夫。自分のことは自分で何とかするよ。カナは西川くんのことを心配してやって」

「……心配くらいさせろよ、バカ」

「ありがとう。でも俺のことは本当に大丈夫だから。GDのことはこっちに任せて。野球部方面も俺の担任が顧問みたいだからそれとなく探り入れてみるよ。カナは西川くんと一緒にいて不用意にあの3人と接触しないように見張っててあげて。それと西川くんがこれからどうしたいのかもそれとなく聞いてみてよ」

「分かった。……巻き込んでごめん」

「俺から話振ったのに?」

「それでも、巻き込みたくなかったんだよ。家族を……す、きな奴を面倒なことに巻き込みたいわけねぇだろうが。常識で考えろバカ」

「っ、」



不意打ちは狡い。
真面目な顔して何を言うかと思ったら、なんてこった。
忘れていたわけではないのに、カナの想いに触れて告白された時の熱量が蘇って来た。



「お前には振られたけど、まだ好きだから……そう言う意味で」



顔に熱が集中する。



忘れてない。

忘れてない、けど。



「覚えとけよ」



……油断していた。


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