歪んだ月が愛しくて2
「確かに駒鳥は“B2”の一員ではない。ただ駒鳥が望めば僕はいつでも彼を受け入れるつもりだよ。だから彼に贈った団服に蝶の刺繍を施したのさ」
「立夏くんの後ろ盾にでもなったつもりですか?彼に手を出せば“B2”が黙ってないと」
「牽制する相手が間違ってんじゃねぇの?族相手じゃあるまいし、うちの王様が“蝶”なんて相手にすると思うか?」
「あの刺繍のこと、マーキングって言ってたよね?リカが望めば受け入れるなんて殊勝ぶったこと言ってたけど、端っから掻っ攫う気満々じゃん」
「アイツが、それを望むとでも?」
「人の心は移り気易いものさ。今の駒鳥が僕を受け入れられなくても、5年後、10年後はどうなるか分からない。だから僕は彼が心変わりした時、いつでも彼を受け入れられるように彼の居場所を守るだけだよ」
「……それが“B2”だと言いたいのか?」
「そうとも。“B2”には駒鳥の熱狂的ファンが多くてね。そりゃもうストーカー並みの執念深さと愛情深いメンバーが揃っているから、彼も安心して身を隠すことが出来るだろう」
「誰がストーカー並みの執念深さですか。言って置きますけど、それに全部該当してるのは貴方と姫と……その他数人くらいですからね」
「おや、君は僕以上のストーカーだと思っていたが」
「貴方にだけは言われたくありませんよ」
ストーカーにストーカー呼ばわりされてしまった。
大体、俺にストーカーを強要したのは他ならぬアゲハさんじゃないか。
よくも“僕以上のストーカー”なんて言えたものだ。
「身を隠す、だと?」
ピクッと、神代会長の低音に目尻が上がる。
目敏いな。
嫌なところを突いて来やがって。
………でもね、アゲハさん。
「お前等は何からアイツを隠そうとしてるんだ?」
今のは失言ですよ。
「……少し、無駄話が過ぎたようだね」
「本当ですよ」
余計なことを。
しかも、よりによって…、
「答えろ」
一番面倒な人間に目を付けられるとは。