歪んだ月が愛しくて2



それから未空は俺に手を振った後、グラウンドに乱入して葵の救出に向かった。
覇王の未空が助けに行けば親衛隊も大人しくなるだろう、多分。
でもまさかあんなえげつないお題まで用意されてるとは思わなかった。
他人がやる分には面白いから笑っていられるがいざ自分がやるとなると全く笑えない。
鼻眼鏡<女子高生<恋人と来たが、どんどんグレードアップしている気がするのは俺だけだろうか。
どうかどうかもう少しマシなお題でありますようにと切に祈るしかなかった。



「アオー!助けに来たよー!」

「未空くんっ!」



『許せない!史くんを傷付けた奴を…僕は絶対に、絶対に白夜叉を許さないっ!』



葵は大丈夫だろうか。
あの日以来、葵が泣いているところは見ていない。
でも時折見せる憂いた表情が葵の心情を物語っているように思えた。



(大丈夫、なわけないか…)



普段から他人を悪く言わない葵があんなにも感情を剥き出しにして白夜叉に対する怒りをぶつけていた。
自分では制御してるつもりでも抑えきれない感情が爆発したんだろう。
それだけ葵にとってその友達が大切な人だと言うことが分かる。



俺だって。



『…ごめん、シロ……』



ギュッと、拳を握る。



大切な人を傷付けられて何とも思わない人間はいない。
俺がそうであったようにもしかしたら葵も俺と同じように…。



考え出したらキリがない。
でももし万が一にも葵が俺と同じことを考えていたら俺は葵を守れるだろうか。



………いや、守る。



カナに大見栄切ったじゃないか。

この手が届く範囲は守るって。



それに葵は友達だから。

俺のようにはならないで欲しいから。





その前にまずは鼠を駆除しなきゃな。


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