歪んだ月が愛しくて2



どうしたものか…。

“気になる人”なんて全然思い浮かばない。



これなら“恋人”の方がまだマシだった。
現実に恋人なんていないから喜んで失格になれるのに、“気になる人”と曖昧なお題を出されたらよーく考えれば思い浮かぶかも……なんて思っちゃうじゃん。これでは勝負を諦めたくても諦めきれない。



「おーい、りっちゃーん」



再び俺を呼ぶ声が聞こえる。

その声に視線を彷徨わせると。



「こっちこっちー」



そこにいたのは未空以外の覇王3人。
彼等は運営側にまたもや特設席を作らせて、3人仲良くティータイムを楽しんでいた……ように見えたのは九澄先輩だけで、会長と陽嗣先輩については退屈そうにソファーに凭れて雑誌を読み耽っていた。
ここに来てまで覇王の特権を使うのか。いや、そもそも体育祭に参加していることに驚いた。
九澄先輩は実行委員会だから運営側にいるのは当然だとしても、会長と陽嗣先輩は気分次第みたいなこと言ってたからまさか本当に参加するとは思わなかった。まあ、参加とは言っても制服着てる時点で競技に出る気はないんだろうけど。



「なーんか難しい顔してっけど大丈夫か?ヤバいお題引いちゃったとか?」



クッソ、ニヤニヤしやがって。

完璧面白がってるじゃねぇか。

人の気も知らないで。



……ん?

待てよ。

“気になる人”と言えばこの人もそうか。

アゲハとは違う意味で胡散臭い笑顔だし、本心を見せないし、いつも飄々として何を考えてるのか分からない人だから。



何より陽嗣先輩は俺のこと嫌いみたいだし。



「大丈夫ですよ。そんな深刻な顔しなくても肩の力を抜いてリラックスして下さい」



九澄先輩には嫌われてないと思う………多分。

だからそう言う意味で気になったことはないが、中途半端に聞かされた九澄先輩の家のこととか、独りじゃない発言をしたのが誰なのかとか、そう言う部分に関しては気になっていた。


< 353 / 651 >

この作品をシェア

pagetop