歪んだ月が愛しくて2
「……足、本当に大丈夫なのか?」
保健室に向かう途中、白樺は俺の左足を控えめに見てそう言った。
「足?別に何ともないけど」
「………」
「え、何その目?」
「いや、嘘が上手いなと思って」
「人を嘘吐きみたいに言うなよな」
そう言いつつも内心ビクッとした。
誰にも気付かれてないはずの“それ”に白樺だけが気付いていた。
何で?
顔には出してないはずなのに。
「本当は足捻ったんでしょう。さっきグキッて音聞こえたよ」
「え、」
まさかの音?
そんなことってある?
「何であの場で素直に怪我したこと言わなかったの?あの葵って子が気にするから?」
白樺は訝しげな表情で俺の顔を覗き込む。
そんな白樺に無意識に溜息を吐く。
「痛くねぇからだよ」
「嘘だ」
「嘘じゃねぇって。それにあんな大衆の面前で“足捻りました”なんて言ったらどうなってたと思う?オカン頼稀と変態過保護と珍獣野生児とその他諸々に担がれて今頃病院のベッドでおねんねしてたわ。たかが捻挫でだよ。そんな辱め死んで御免だね」
「……要するに、君は“他人に迷惑を掛けたくないタイプ”の人間なんだね」
「どんな人間だよそれ」
「だから君みたいな人だって」
「俺みたいな人って何?アンタに俺の何が分かんの?」
「、」
途端、白樺はグッと言葉を閉ざした。
それから少し歩いて振り返ると、白樺がついて来ていないことに気付いた。
今の言い方は良くなかったかもしれない。
売り言葉に買い言葉でつい言い過ぎてしまった。
「あー…悪い。言い過ぎ、「じゃあっ」
その声に、今度は俺が足を止めた。
後ろから降って来たその声に俺は振り返って白樺を見据えた。
「何で、僕を責めないんだよ…」
語尾が小さくなる。
白樺は俺と目を合わせないように俯き、何かを堪えるようにジャージの腿の辺りを握り締めていた。