歪んだ月が愛しくて2
そう言えば白樺の姿が見えない。
と思いきや、白樺は保健室の棚を何やらゴソゴソと漁っていた。
不審者?
「……何してんの?」
「湿布と包帯探してんの」
「先生は?」
「いないよ。運営席で待機してるんじゃない」
「え、いないのに連れて来たの?」
だったら運営に連れて行けよ、と思った。
「あのね、僕だって手当てくらい出来るんだよ」
「いや、アンタの腕を疑ってるわけじゃなくて」
「だったら何?文句?」
「そうじゃなくて」
……ダメだ。
白樺のペースについて行けない。
「ほら、靴と靴下脱いで」
そう言われて渋々ベッドに座ったまま左の靴と靴下を脱いだ。
すると白樺は俺の足元にしゃがんで、そっと冷たい指で俺の足首に触れた。
「……話が、したかったの」
「話?」
「今の時間、ここなら誰もいないって聞いたから、それで…」
それで率先して手を上げたわけか。
「で、話って何?」
「………」
「ん?」
白樺はゆっくりと顔を上げた。
そして暫く俺の顔を覗き込んでから。
「……ごめん」
「は?」
ごめん?
え、何が?
「月さんのことだよ。まだちゃんと謝ってなかったから」
「あ、ああ…」
さっきの話、まだ続いてたのか。
「君は気にし過ぎって言うけど、僕は…ちゃんと謝りたかった…」
「………」
「ごめん…」
「どうでもいいって言ったのに」
「どうでも良くない!誤解されたままでいいわけないじゃん!自分のことなのにどうしてそんな他人事なんだよ!?」
どうでもいい。
誰に誤解されようとも、誰にも理解されなくても、心底どうでもいい。
―――はずだったのに。