歪んだ月が愛しくて2



「僕は嫌だよ!僕は、皆に…君のことを何も知らない人に、君を悪く言われたくないっ!」



目を背けたくなるくらい、真っ直ぐな瞳。

どいつもコイツも、俺には眩し過ぎて見ていられない。



「……頑固」

「が、頑固⁉︎君が自分のことに無頓着過ぎるんだよ!」

「俺的にはどうでもいいんだよな、そう言うの」

「僕が嫌だって言ったでしょう。君の意見は聞いてないよ」

「うわ、まさかのツンデレ?10円のくせに?」

「どっかの死に急ぎバカには言われたくないよ」

「言うねアンタ」

「そっちこそ」



口では憎まれ口を叩きながらも、白樺はスムーズな手付きで治療を再開した。
左の足首に貼られた湿布が思いの外冷たくて思わず眉を顰めた。



「冷たかった?」

「ん、」



でもお陰で頭が冴えて来た。



……もう見えない。



あの声は、聞こえない。



白樺の表情も心なし柔らかく見えた。





『何で、僕を責めないんだよ…』





あんな顔されるより、断然いい。



「器用なもんだな…って何その顔?顔赤いけど大丈夫か?」

「べっ、べべ別に何でもないよ!ほら、勝手に動かないで!包帯が緩んじゃうでしょう!」

「はいはい」



……嫌じゃない。

この会話も、白樺に触れられることも。

寧ろ違和感がなくて自分でも驚いたくらいだ。



「ちょっとここ押さえてて」

「あ、うん」



俺は白樺に言われるがまま足首に巻かれた包帯を手で押さえた。
その間に白樺は包帯止めとペットボトルのお茶を持って来た。
そしてペットボトルだけを俺に手渡して「お詫び」と付け加えた。
何のだよ…と内心思いながらも、素直に受け取ってベットの上に置いた。



「その眼鏡、前に伊達眼鏡って言ってたけど、何でそんなもの掛けてるの?」

「気分」

「イメチェン的な?」

「ま、そんな感じ」

「……勿体ない」

「何が?」

「その眼鏡のせいで色々と損してると思って。外した方が、その………き、れいなに…」

「は?」

「と、とと兎に角、色々損してるってこと!眼鏡なんて掛けなければ“オタクヤンキー”とか“ブス”とか“根暗”とか“ちんちくりん”とか言われることもないのにってことだよ!」



え、そこまで言われたの?

後半は初耳なんだけど。


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