歪んだ月が愛しくて2
「……ここ、だよ」
白樺に案内されたのは、西棟に併設した倉庫だった。
この時間、西棟付近には人がいない。
体育祭の最中に、それもまもなくメイン競技が始まろうとしている時に、こんなところに用がある人間なんてまずいないだろう。
……俺と、奴等を除けば。
白樺の手がドアの把手に伸びる。
でも、開けられない。
その手は微かに震えていた。
「ふ、藤岡、僕…っ」
「大丈夫」
白樺の身体を押し除けて前に出る。
手に持っていた飲み掛けのペットボトルを白樺に押し付けて、躊躇うことなくドアを開け放つ。
そこにいたのは…、
「やあ、待っていたよ」
恐極月
「……遅かったな」
村雨日瀧
そして、彼等の後ろに控えるのは、腹を空かした貪食なドブ鼠共だった。