歪んだ月が愛しくて2
体育祭と報復
バンッ。
俺の背後で勢い良く扉が閉まる音がした。
薄暗い倉庫内にはガムテープで目張りされた鉄格子付きの小窓しかなく、唯一の灯りは切れかけた蛍光灯だけ。チカチカして目が痛い。
背後から「はぁ、はぁ…っ」と白樺の荒い息遣いが聞こえる。
「ご苦労様です、白樺さん」
「い、え…」
大して広くもない倉庫内には、月を筆頭に十数人の男達が控えていた。
その中には月至上主義者の村雨日瀧もいて、どう言うわけか頭や腕に包帯を拵えていたが、それについてはどうでもいいか。
(それよりも…)
「藤岡くんも、久しぶりだね」
癇に障る声。
気持ち悪い笑顔。
(ああ、やっぱり嫌いだな)
「何の用だ?」
笑えない。
口角さえ上がらない。
そんな俺とは対照的に、月は上機嫌に気味の悪い笑みを浮かべていた。
余裕とも言える。
一体、何を企んでいることやら。
「久しぶりの再会だって言うのにそれはないんじゃないの?僕はあの日からずーっと君に会いたかったって言うのに。ねぇ、日瀧」
「はい、月様」
満身創痍の村雨は月の背後に立つ。
ヤエの情報によると、村雨は月の側近として組に出入りしているらしい。
現在役職には就いていないようだが、月が若頭に就任したと同時に補佐になるとかならないとか。まあ、どうでもいいけど。
それよりも2人の後ろに控える男達の雰囲気の方が気になっていた。
どう見ても一般人のものとは思えないそれに、村雨のようなただの付き人ではないことを確信した。
「てゆーか、この僕が君みたいな奴に会いたかったって言ってあげてるんだよ。しかも君のために態々こんなところまで出向いてあげたって言うのに、何その態度?あーあ、僕悲しいな」
「……それが謝罪する奴の態度か?」
「謝罪?あー…そう言えばそんなテイだったね」
途端、月の口元がニィッと笑みを深めた。
「今日僕がここに来たのは、君にこの前のことを謝りたくて…
―――なーんて、言うと思った?そんなわけないじゃんバーカ」
あーあ、折角の体育祭が台無しだ。