歪んだ月が愛しくて2
「大体さ、何でこの僕がお前みたいな奴に頭下げなきゃいけないわけ?僕はね、恐極組の若頭なんだよ。有り得ないでしょう」
恐極組は白桜会系の二次団体。
血脈を重んじる頭でっかちな暴力団らしいが、現状は白桜の名を後ろ盾に好き放題やってるだけでその辺のチンピラ共と何ら変わらない。しかもヤエ曰く堅気にも平気で手を出すクズだとか。
「あ、もしかして僕が本当に謝ると思った?あははっ、バッカじゃないの!誰がお前なんかに謝ってやるかよ!頭の中お花畑過ぎるんじゃない!」
そこの次期若頭を豪語されたところでクズさが増すだけだと言うことに、本人はまるで気付いていない。
そんな月を前にして耐え切れずに鼻で笑ってしまった。
「は?何笑ってんの?」
「いや、恐極組の次期若頭がこんなにもバカで面白くて」
「っ、お前、自分の立場が分かってないの!?」
月はポケットから小振りのナイフを取り出して俺に刃先を向けた。
「この状況でよくそんなことが言えたものだね。その眼鏡はただの飾り?目見えてないんじゃないの?」
「そっちこそ学習能力ねぇな。この前のことまだ懲りてねぇの?」
「あ、あれはっ、アイツ等が使えなかっただけだ!この僕が金まで出して雇ってやったって言うのに、あんな使えないクズ共だったなんてとんだ誤算だよ!」
否定はしない。
でもクズなのは奴等だけじゃない。
自分の玩具が壊れて残念程度ならまだ可愛げがあったものを、ここまで自分の非を認めずにその非を一方的に相手に押し付けるなんて、本当救えないバカってどこにでもいるんだな。
「でも、今回はそうはいかないよ」
ナイフをチラつかせ、月は一歩ずつ俺に近付いて来る。
まあ、救ってやる気なんざ更々ないが。
一歩。
また一歩と、縮まる距離。
「―――どう言うこと、ですか」
その声に月の足がピタッと止まった。