歪んだ月が愛しくて2



「これでも譲歩したんですよ」

「長ぇわ、甘ったりぃわ、むず痒いわ、いつまでイチャイチャしてるつもりだよ。羨ましいから俺も混ぜろ」

「煩ぇ。立夏が起きる」



陽嗣は咄嗟に口元を抑えて九澄に続いて大人しく反対側のソファーに座った。



「で、何しに来た?」

「随分な言い方じゃん。とっておきの情報を持って来てやったって言うのに」

「情報?」

「まあ、その様子だと既に知ってると思いますが」

「……立夏の弟か」

「まさかりっちゃんの弟が転入して来るとはね。まさかの特例2人目」

「弟と言っても立夏くんは藤岡家の養子なので血の繋がりはないようですが」

「それが何だ?まさかそんなことを言うために邪魔しに来たのか?」

「邪魔って、お前な…」

「本題はここからです。尊は転入生について理事長から聞いていましたか?」

「いや、初耳だ」

「それって可笑しくねぇか?いくら尊と理事長の仲が最悪でも連絡くらい寄越すだろう、立場上」

「現に立夏くんの時は事前に連絡がありましたから色々と対応出来ましたしね」

「……立夏も、知らされてなかったからな」

「は?マジ?普通りっちゃんには一番に話すだろう」

「尚更可笑しいですね。まるで立夏くんや僕達にその存在を故意に知らせなかったように思えます」

「どう見ても故意だろう。それにりっちゃんの態度も気になるしよ…」

「聞いてたのか?」

「聞こえたんです。盗み聞きじゃありません」

「どうだか」

「マジで潔白だって!何なら脱いでもいい!」

「テメーが脱ぎてぇだけだろうが」

「変態は黙ってて下さい」

「変態じゃねぇよ!」


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