歪んだ月が愛しくて2
「未空、風魔に連絡して立夏のことを伝えろ」
「分かった!頼稀を通じて“B2”にも動いてもらう!」
「九澄、白樺のスマホの位置を探れるか?」
「やってみます」
未空と九澄に指示を出した後、尊はスマートフォンでどこかに電話し始めた。
誰と電話してるのか知らないが、早口で捲し立てるような口調から相当切羽詰まっているのは明らかだった。
尊とは幼稚舎からの腐れ縁で、皮肉なことに一番付き合いも長く、所謂幼馴染みと言う奴だ。
そんな尊の一番の理解者…なんて気持ち悪いことは言わないが、そんな長い付き合いの中で尊のこんな焦った顔を見たのは初めてだった。
他人のことなんか一切お構い無しに我が道を行く冷たい王様。
分厚い仮面を何重にも被って、表情筋が死んでるんじゃないかってくらい感情を押し殺す、悲しい王様。
そんな尊がりっちゃんがいなくなっただけでこんなにも余裕をなくして、「感情」と言う名の仮面が今にも剥がれそうになっていた。
『立夏は、俺等の仲間だ』
(無理もねぇか…)
でも、尊の場合はそれだけじゃない。
「白樺くんの居場所が分かりました!場所は中庭で……グラウンドに向かっています!」
「行くぞ!!」
尊に続いて全速力でグラウンドに向かう。
保健室の窓から飛び出して中庭を突っ切った。
人が少ないから走り易い。いや、若干の人の群れはあるが、先陣を切って走る尊の勢いと殺伐としたオーラのせいで花道が出来上がっていた。
りっちゃんが無事でいてくれればそれでいい。
本当、それだけでいいから。
他には何も望まねぇから。
だから、どうか、頼むから…。
「無事でいてくれよっ」