歪んだ月が愛しくて2
「ふ、じおか…、怪我は、それに…っ」
「……大丈夫、」
泣き過ぎて顔面グチャグチャな白樺を見て、リカは「無事で良かった」と少し辛そうに微笑んだ。
こんな時まで他人の心配ばっか。
自分のことは二の次で、いつまで経っても自分を優先してくれない。
「九澄、任せていいか?」
「ええ。貴方は立夏くんの手当てを」
「リカ…」
つい心細い声を漏らすと、リカは俺を安心させるために口元を緩めた。
ほら、今だって。
自分のことよりも俺のことを心配している。
「立夏!」
頼稀は男達を拘束し終えると、険しい顔をしながらリカの元まで駆け寄って来た。
頼稀の視線の先にはリカの手首にキツく嵌められた手錠があった。
「待ってろ、今取ってやる」
「、」
「立夏?」
「……な、でもない」
頼稀がリカの手首に触れた瞬間、リカはまた苦しそうに顔を歪めて切羽詰まったような声を漏らした。
リカの呼吸もさっきより荒々しく息苦しそうに見えた。
「お前、まさか奴等に…っ」
「風魔、早くしろ」
何かに気付いた頼稀を尊の声が急かす。
「アンタ…」
「お前は鼠の始末を頼む」
「………言われなくても」
すると頼稀は苦虫を噛み潰したような顔をして、どこからか取り出した針金を使ってリカの手錠を外した。
ガッシャンと派手な音を立てて、手錠に繋がっていた鉄格子が床に落下した。
その音量からしてかなりの重量があったはずだ。
小窓の格子が壊れていたことから、もしかしたらリカはあの鉄格子に繋がれていたのかもしれない。
もしそうだとしたら恐極達は抵抗出来ないリカに……、クソが。
許せない。
許せるわけがない。
腹の奥が煮え滾って仕方ない。
どう考えても尊の一発じゃ割に合わねぇよ。
「頼稀、カメラ……た、のむ…」
「ああ」
それだけ言ってリカは尊の腕の中でそっと目を伏せた。
上気した頰と、荒い呼吸は変わらない。
目を伏せていても、眉間の皺が残っていた。
(……やっぱり、割に合わない)
リカがこんなに苦しんでいるのに、何でコイツ等は暢気に寝てるわけ?
リカを苦しめといて、傷付けといて。
可笑しいでしょう。絶対に可笑しいよ。