歪んだ月が愛しくて2
その音に何事かと思い振り返ると、倉庫の隅に設置されていたカメラを頼稀が破壊していた。
何度も何度も足で踏み潰して、カメラだったはずのそれは既に原型を留めていない。
そして最終的にはSDカードまで真っ二つにして映像どころの話ではなくなった。
「賢明な判断だな」
「……どーも」
頼稀に褒められても嬉しくない。
まあ、お陰で目が覚めたけど。
「あーあ、何でカメラ壊しちゃったかな。大事な証拠なのによ」
「必要ない。こんなものがなくても立夏の状態を見ればここで何があったかは容易に想像が付く。俺達が動く理由としては十分だ」
「やっぱり“B2”も動くんだね…」
「当然だ」
頼稀の意思は固かった。
とてもじゃないけど手を出すなとは言えない。
大切な人を傷付けられた怒りや悲しみが、手に取るように分かるから…。
「そちらはこの後どう動くつもりですか?」
「鼠の後始末をさせてもらうよ」
「またうちから掻っ攫ってくつもりかよ」
「攫うだなんて人聞きの悪い。僕は僕のやるべきことをやるだけさ」
「俺達だってリカに手出した奴等は見逃せないよ!」
「最もらしい意見だが、俺達にも引けない理由があるんでな。それに神代会長にも任されたことだし、こちらはこちらで好きなようにやらせてもらう」
確かに、尊は頼稀に鼠の始末を任せた。
でもあれは尊の本心じゃない。
リカを覇王側で保護する代わりにチラつかせた餌に過ぎない。
本心ではリカを傷付けた連中を自分の手で始末したいと思っているはずだ。
ジャリと。
そんなことを考えていると、不意に背後から足音が聞こえた。
その音に釣られて振り返ると。
「総長、頼稀くん」
「お待たせしました」
「え、何で、2人がここに…」
そこにいたのはクラスメイトの汐と遊馬だった。
しかも今“総長”って聞こえた。
それはつまり2人も“B2”のメンバーであることを意味していた。
「“B2”、だったの…?」
無意識に口から出た言葉に遊馬は「そうだけど」としれっと答えた。
後ろめたさとか、戸惑いとか、一切感じさせることなくしれっと。
まるで「知らなかったの?別に隠してなかったけど」と言わんばかりに堂々としていた。
「彼等も“B2”のメンバーだよ。2人には駒鳥の護衛を任せていてね。今後2人は駒鳥と行動を共にすることが多くなると思うから紹介して置くよ」
ああ、だから最近一緒にいたのか。
それについてはすんなり納得出来た。
でも納得出来ないこともあった。
「……護衛って、何?」