歪んだ月が愛しくて2
「それよりも月の家から何かしらのアクションはありましたか?アイツの家って確かヤクザですよね?バカ息子が帰って来なくて学校に乗り込んで来たりとかしてないですか?」
「ご心配には及びません。そちらも既に手は打っております……と言いたいところですが、先手を打たれました」
先手?
「ですが、結果的に恐極組の報復を危惧する必要はなくなりました」
「……どう言う、意味ですか?」
スッと、目を細めて次の言葉を待つ。
「恐極組はもうこの世に存在しないからです」
「………殺ったの?」
文月さんが?
それとも…。
「主人ではございません。恐極組を壊滅させたのはたった1匹の狂った獣でございます。立夏様ならもう既に見当が付いているのではありませんか?」
“狂った獣”
そのワードが指し示す人物は限られている。
でも組一つ潰せるだけの力と、この短時間で恐極に辿り着いたことを加味すると、該当する人物は1人しかいない。
「あのバカ…」
はぁ…と、大袈裟に溜息を吐いて頭を抱える。
まさかアイツが動くとはな。
いや、全然予想出来なかったわけじゃないが、アイツに動かれると色々と面倒だから“B2”に頼んだのに、これでは何のために“B2”を巻き込んだか分かったものじゃない。
いくらアイツがキレたら手の付けられないキチガイ野郎でもそのくらいの判断は付くと思っていたが…。
……違う、な。
(枷を外させたのは、俺か…)
責められない。
今回の件、非があるのは間違いなく俺だ。
トントントン
「失礼致します。龍鈴寺総合病院から医師が到着しました」
「通して下さい」
「畏まりました」
別荘の管理を任されている飛鳥院家のメイドが一礼してから部屋を出て行くと、哀さんは「お座り下さい」と言って俺にソファーに座るように促した。
「哀さん、俺のスマホって向こうに置きっぱなしですよね?」
「はい。必要であれば私のをお使い下さい」
「……いや、いいです」
どの道アイツの連絡先はもう1台のスマートフォンにしか入っていない。
ここにいる限りアイツと連絡を取るのは諦めよう。
それに連絡が付いたところで、俺はアイツに何て言えばいいのか分からない。
「よくやった」でも「余計なことするな」でもない。
ただ一つ確かなのは、俺のせいでアイツやハルにまで迷惑を掛けてしまった事実だけ。
………ん?
あれ、もしかして…。
「俺のスマホ、態と置いて来ました?」
「はい」
いや、はいって…。
そんな爽やかに言われても。