歪んだ月が愛しくて2
「す、凄い量だね…」
まもちゃんのエスコートで中庭に向かうと、既にそこにはアフタヌーンティーの用意が整っていた。
(流石田中さん、仕事が早いよ)
ロータリーに咲き誇る植物も色鮮やかで綺麗だったが、中庭はそれ以上の種類の植物と涼しさを感じさせる立派な壁泉がマッチした見事な空間を作り出していた。
その中央に用意されたテーブルセットは白を基調としたもので、俺はまもちゃんに椅子を引かれて腰を落とす。
目の前に用意された豪華な三段式のケーキスタンドはまるで一つの絵のように美しく食べることを躊躇させる立派過ぎるものだったが、量が量だけに無意識に顔を引き攣らせてしまう。
「さあ、遠慮せずに沢山食べなさい」
そう言われてもこの量は半端ない。
一番下の段は5種類のサンドイッチが盛られていて、真ん中にはケーキのセレクションが所狭しと並んでいる。
マカロンにフルーツタルト、ショートケーキ、ベイクドチーズケーキ、チョコレートケーキ、ホワイトチョコレートのムース。
更に一番上の段にはプレーンとレーズン入りの2種類のスコーンとパウンドケーキが乗っていた。
これに紅茶が付いて来るのは言うまでもない。
この量が全部貰い物って絶対嘘でしょう。
「立夏様は何を召し上がられますか?」
「えっ、あー…」
いつの間にかまもちゃんの背後に控えていたはずの田中さんが隣にいて驚いた。
「リリーはフルーツ系が好きじゃなかったか?」
「あ、うん、……好き」
「田中」
「では、立夏様にはこちらがよろしいのではないでしょうか?」
「あ、ありがとうございます…」
「リリーの口に合うといいんじゃが…」と言葉を漏らすまもちゃんを横目に、田中さんが皿に装ってくれたフルーツタルトにフォークを刺して口の中に運ぶ。
「……んっ、美味しい!」
フルーツの酸味とクリームの甘さがしつこくなくて丁度いい。
やっぱりまもちゃんが勧めてくれるケーキは外れがなくて美味しい。
「気に入ってくれたかの?」
「うん。ありがとうまもちゃん、凄く美味しいよ。これくれた人にもお礼言いたいくらい」
「それなら儂が伝えよう。リリーが大層気に入ったと知れば彼奴も喜ぶだろう」
彼奴って誰だろう。
きっと俺の知らない人だから深くは追及しないけど。
ふと目の前に座るまもちゃんの皿を見ると、美味しそうなベイクドチーズケーキが乗っていた。
「まもちゃんって今でもチーズケーキ好きなんだね」
「儂は甘い物が得意じゃないからチーズの酸味が丁度いいんじゃよ」
「俺もチーズケーキ好きだよ。前に作ったことあるし」
「ほお、リリーが作ったものとなればさぞかし美味しいんじゃろうな。今度儂にも作ってくれんか?」
「いいよ」
機会があったらね…と言葉を続けようとしたが、その前にまもちゃんが「本当か!?約束じゃぞリリー!絶対じゃからな!」と子供みたいにはしゃぐからそれ以上のことは言えなかった。
今度田中さんにまもちゃんの誕生日教えてもらわなきゃな。