歪んだ月が愛しくて2



脳裏に過ぎったヴィジョンを払拭するかのように、片手で顔を仰いで熱を冷ます。



「立夏くん、本当に違うんだよ!」



それにしても可愛いな。
その反応が一々可愛いせいで皆に揶揄われていることに本人だけが気付いてないようだ。ドンマイ。



「僕、本当にモテないし、デートなんかじゃなくてただプレゼントを買いに行きたくて!それで、それでね…っ」

「か…」



可愛過ぎんだろうおぉおおお!!

上目遣いとか反則だって!!これは卑怯だよ!!



「立夏くん!」



こんなのもうリアル天使じゃん。

これでNOって言える人いる?

いたら教えてくれよ。頭かち割って見てやるからさ。



「……信じてるよ。信じてるからその顔はやめて」

「へ?」



この無自覚め。



「あーあ、とうとう眼鏡ちゃんもエンジェルの毒牙にやられたか」

「やられた…」

「アオは可愛いからな。でも俺はリカの方がもっと可愛いと思うよ!」

「あー…はいはい。そう言うのいいから」

「もう全然信じてないし!これで何度目!?皆からも何か言ってあげてよ!」

「言わんでいい」



すると未空の戯言にすかさず声を上げたのは汐だった。



「藤岡くんは可愛いよ!いや、もう可愛いってレベルじゃなくてスーパー可愛くて綺麗だよ!もうこの世の人間だとは思えないくらいに!」

「へ、へー…」



いや、そんなムキにならなくても。

これはお礼を言うべき?ありがとうって?……それも違うだろう。



「うわっ、汐が必死過ぎてキモ」

「キモー」

「キモくねぇよ!本当のことだろうが!」

「いんや、キモイね。キモイから俺のリカに近付かないでね、移っちゃうから」

「移んねぇよ!俺は病原菌か!?」

「似たようなもんだろう」

「本当ドン引きなんだけど」

「うん、ちょっと気持ち悪いかも」

「だからキモくねぇって!俺はただ皆の気持ちを代弁しただけじゃねぇか!」

「皆じゃなくて汐と未空の気持ちだろう」

「どいつもコイツも…(怒)」

「汐のくせに沸いてんじゃねぇよ」

「俺のくせにってどう言うこと!?」


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