歪んだ月が愛しくて2



「決めるのはリリーじゃよ。誰に遠慮することはない」

「………」



まもちゃんは俺を急かすわけでもなく、ティーカップに口を付けて優雅に紅茶を飲む。
まもちゃんの後ろに控える田中さんも主人であるまもちゃんの意向を汲み取り、穏やかに目を細めてるだけで何も言わない。
きっと俺がどんな決断をしようと、この2人は何も言わずに背中を押してくれることだろう。
例えそれがまもちゃん達の望む結果ではなかったとしても。



「……俺、帰らなきゃ」



だから、甘えることにした。



「骨は拾ってね、まもちゃん」



後のことは任せた発言をした俺にまもちゃんは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの優しい表情を浮かべた。



「……本当に、変わっとらんのリリーは」

「左様でございますね」

「そうかな?」



俺だって逃げられるものなら逃げたいさ。
でもいくら逃げたところでそれが一生付いて回るなら逃げたってどうしようもないじゃないか。
それに覇王からの追及を回避しようと考えている時点で俺の答えは決まっていた。



(まだ、覚悟は出来てないけど…)



会長のことは一旦考えるのをやめよう。
まだ会うのは気まずいけど、覇王のことを片付けないことには先に進めそうにない。



「ケーキご馳走様でした。今日はもう帰るね」

「待ちなさい」

「何?」

「これ、儂と田中の連絡先じゃ。何かあればすぐに掛けて来なさい。リリーのためならどこにでも駆け付けるぞ」

「お気軽に電話下さい」

「ありがとう、まもちゃん、田中さん」



俺は2人の連絡先が書かれた紙を受け取ってポケットの中に仕舞った。


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