歪んだ月が愛しくて2
「―――そう、君達はリツの友達なんだ。そうとは知らず見苦しいところを見せちゃってごめんね」
チサさんは俺達がリカの友達だと分かると、何事もなかったかのように理事長の胸倉から手を離して、平然とした様子で俺達に話し掛けてくれた。
その間、理事長は苦しそうに咳き込んでいたが、隣にいるカナちんからは大丈夫の一言もなく、その上「……兄貴、とりあえず座って話せよ」と見事にスルーされていた。
チサさんとカナちんが来賓用のソファーに座ったところで、俺とヨージと九ちゃんも尊が座ってるソファーに横並びで座って、改めて目の前の彼等を見据える。
カナちんは相変わらず無愛想が服着て歩いてるようなムスッとした感じだったけど、理事長室に乗り込んで来た時よりかは大分落ち着いているように見えた。
チサさんはと言うと理事長室に入って来た時と変わらず終始爽やかな笑顔を浮かべているものだから、理事長の胸倉を掴んでいたあの光景が夢だったんじゃないかと錯覚しそうになった。
「初めまして、藤岡千種です。お察しの通りリツとカナの兄で、文月くんとは親戚同士なんだ。そしてこっちが…」
「俺のことはリツが紹介したから知ってるよ、コイツ等」
「カナ、コイツ等なんて失礼だよ。いつも言ってるだろう、言葉遣いには気を付けなさいって」
「へいへい」
「ごめんね、僕が甘やかして育ててしまったばかりにこんな我儘になっちゃって…。リツの言うことなら何でも聞くんだけどね」
「なっ!?い、今はそんなことどうでもいいだろうが!一々アイツを引き合いに出すんじゃねぇよ!」
「本当のことでしょう、カナちゃん♡」
「うっせー!!」
この人がリカのお兄さん。
そして、多分リカの好きな人。
チサさんの印象は第一印象とほぼ変わらない。
爽やかな笑顔が特徴の優しい人って感じ。
でもカナちんとのやり取りを見ていると、弟を揶揄うのが好きなちょっと意地悪な人って印象も受けた。
リカとチサさんもこんな感じなのかな?
「まあまあ、弟さんが立夏くんのことを大好きなのは周知の事実ですからあまり揶揄わないであげて下さい」
「は…、はぁああああ!?」
「ああ、やっぱり学校でも常にベッタリなんだ」
「いえ、それはどちらかと言うと我々の方かと…」
「え、君達の方って?」
「僕達4人と立夏くんは同じ委員会なんです。ここは全寮制ですから授業以外の時間はほぼ一緒にいると言っても過言ではありません」
「え、リツが委員会に…?」
「申し遅れました。僕は皇九澄と申します。立夏くんと同じ生徒会の副会長をしています」
「同じく生徒会書記の御幸陽嗣です。宜しくね、おにーちゃん」
「会計の仙堂未空です!リカとは同じクラスで親友です!」
「生徒会長の神代尊だ」
「態々ご丁寧にありがとう。そっか、あのリツが生徒会に…。あの子はちゃんとやれてる?君達と上手くコミュニケーションが取れてるかな?」
「勿論です。立夏くんはとても良い子でいつも周りを気遣ってくれる優しい子です。悪ぶってるところもありますが、意外と真面目で、苦手なことを克服しようと努力する姿勢は素晴らしいと思います」
「口は悪ぃけどな」
「それ、みーこが一番言っちゃいけない台詞だと思うよ」
「安心してよおにーちゃん。今やりっちゃんは俺達生徒会のアイドルみたいなもんだからさ、熱心な追っ掛けもいることだし」
「追っ掛け?」
「おい、誰が追っ掛けだ」
「ねぇ、追っ掛けって誰のこと?」
「フン、ただのストーカーじゃねぇか…」
「だから追っ掛けって誰のことなのさ!?」
「「「お前だよ」」」
マジか。