歪んだ月が愛しくて2
「あのさ、実行委員会って何すんの?」
「は?今更?」
放課後、俺は体育祭の実行委員会に出席するために、みっちゃんと共に会議室に続く廊下を歩いていた。
「大見得切って引き受けたくせに何も分かってなかったわけ?」
「いや、まさか今日だとは思わなくて…」
「明日だと思ってたの?いくら全寮制でも休日使ってまで行事関係の集まりはしないよ普通。まあ、こんな時期に休む武藤が悪いんだけどね」
「それは仕方ないよ。友達の誕プレ買いに行くって言ってたし」
「友達、ね…」
みっちゃんは意味深に言葉を漏らした。
「……みっちゃん、何か知ってんの?」
「知るわけないだろう。武藤の交友関係なんて興味ないよ。ただ毎年同じ時期に外泊してたら何となく想像付くってだけ」
「同じ時期?」
「仙堂が言うことも強ち間違ってないってこと」
「え、未空って…、まさか本当にデート?」
「本人は認めないけどね」
「じゃあ違うんじゃ…」
「どう考えてもあれは照れ隠しでしょう。てか、バレバレなんだよ。あれで気付かれないと思ってるところがマジ天然」
うん、天然なのは分かる。
「武藤もあそこまで隠す必要ないのにさ。どうせ相手は外の人間なんだから」
「外って…、聖学の人じゃないってこと?確かに地元の人だったら聞いても分かんないよね」
「ま、気になるもんは気になるけどね」
「そこまで?」
さっきは葵の交友関係なんて興味ないって言ってたくせに。
「だって武藤だよ!あの天然ボケボケエンジェル武藤に彼氏なんて聞いてないよ!武藤はね、C組の中では僕のライバル的存在なんだよ!それのなのにいつの間にか彼氏なんて作りやがって、幸せオーラ満載で…っ、どう考えても僕の負けじゃないか!」
「ま、負けって…。別に葵は勝負してないと思うけど」
「武藤はしてなくても僕はしてるんだよ!」
そもそも勝負する必要はないと思うが、なんて言ったらぶっ飛ばされそうだからやめておこう。