歪んだ月が愛しくて2
「でも本当に彼氏がいるかどうかまだ分かんないじゃん。そもそも彼氏じゃなくて彼女かもしれないし」
「いるに決まってんだろう!寧ろあれでいなかったら逆に凄いわ!」
「ご、ご尤も…」
葵、全然隠せてなかったからな…。
ドンマイ。
「それに彼女説も有り得ないでしょう。あの武藤に彼女なんて想像出来ないし、彼氏の方がしっくり来るしね」
「それ何気に酷くない?」
「じゃあ聞くけど、武藤が女抱いてる想像出来るの?僕には男に抱かれてる想像しか出来ないよ」
「やめてー!それ以上言わないでー!」
「煩い。現実を見ろ」
それから暫くして俺達は東棟の会議室に着いた。
着いた途端、みっちゃんはガラッと無遠慮にドアを開けてズカズカと室内に入るものだから、俺もみっちゃんの後に続いて小さな声で「失礼します」と言って恐る恐る足を踏み入れた。
会議室には既に何人かの生徒が揃っていて、教壇に向かって大人しく座っていた。
「これ、どこに座んの?」
「1年は窓側。僕達はC組だからここだよ」
みっちゃんが席に着くと、俺もその隣に座って暇潰しに辺りを見渡す。………と言うか、逆に見られている気がする。
俺達以外の生徒はこちらを見ては何やらひそひそと話している様子が散見される。
「……ねぇ、何で皆こっち見てんの?」
気になってみっちゃんに聞いてみると。
「君がいるからだよ」
「へ?」
俺?
「実行委員は本来各クラスの学級委員2人が抜擢されるものなんだよ。それなのに副委員長の武藤じゃなくて君がいるから周りは不審がってるってわけ」
「あ、それで」
何となく感じたことは、どことなく雰囲気が悪いこと。
確かにみっちゃんの言う通りそれを作り出している原因は俺かもしれないが、だからって見過ぎなんだよ。鬱陶しいし、不愉快極まりない。
「ま、それだけじゃないと思うけど」
「他にもあんの?」
「君は異例の転入生で何かと目立つからね。それにあの尊様のお気に入りだし…」
「会長の?ないない」
「嫌味?それとも無自覚?どっちにしてもうざいんだけど」
「何で!?」