歪んだ月が愛しくて2
「ああ、そうそう。言い忘れてたけど、僕もう覇王親衛隊じゃないから」
「え、そうなの!?」
「尊様直々にお叱りを受けて、今までのようにやっていけるわけないだろう」
「それって最初に突っ掛かって来た時のこと?え、それ結構前のことじゃん」
「まあ、正式に辞めたのはついこの間なんだけどね」
「……それ、陽嗣先輩は知ってんの?」
「勿論。ちゃんとご本人に了承を得なきゃいけないからね」
「そっか…」
どんな言葉を掛けていいのか分からない。
あれほど陽嗣先輩のことが好きだったのに親衛隊を辞めざるを得なかったのはどんなに辛かったことだろう。
きっと他人の俺なんかには想像も出来ないほど苦しんで心を痛めたはずだ。
それに白樺が会長に叱責されたのは半分俺のせいみたいなものだから余計に申し訳なかった。
「言って置くけど、僕が親衛隊を辞めたのは尊様にお叱りを受けたことだけが理由じゃないからね」
「うぇっ!?」
「うぇって…。何か勘違いしてそうだから言うけど、別に無理矢理辞めさせられたわけじゃないよ。僕は自分で辞めることを決めたの」
「な…、」
何で、と思わず聞いてしまそうになった。
でもこれ以上踏み込んでいいものか迷って言葉に詰まる。
「……あのさ、そんな顔するくらいなら遠慮せずに聞いてくれていいから」
「そんな顔って?」
「聞きたいけど聞いていいのかなって顔」
「すいません…」
「別にいいけどね。まだ時間平気ならその辺適当に座って話そうよ」
俺は白樺に促されて手近のベンチに並んで座った。
「何から話そうかな…。僕が陽嗣様のことを好きなのは知ってるよね?」
「よーく知っておりますとも」
そのせいで集団リンチに遭いかけたからね。